梅雨が明けた! - 小金沢山 [山歩き]
土日だけ運行される立川発06:43の甲府行普通列車。新宿を朝の6時ちょうどに出る高尾行き電車に乗ると、立川で乗り継ぐことができる。東京の都心を早朝に出て大月以西へ向かう場合の、最も朝早い部類の電車である。
それが定刻通りの08:01に甲斐大和駅に着くと、私たち5人を含むかなりの人数の登山客が列車を降り、階段を上がって改札口へと急いだ。外ではこの駅前を08:10に出る上日川峠行きのバスが待っている。小型のバスなので日曜日の今日はもう一台増発されていて、小さな駅前は俄かに慌ただしくなった。
補助席まで含めて満席になった小型バスは定刻に発車。甲州街道をすぐに左にそれて県道218号(大菩薩初鹿野線)に入り、急な上り坂ではエンジンをウンウンと唸らせながら走って、8:45に小屋平というバス停に到着。私たちを含めて十数人の登山客がそこで降りた。今日は下界では34~35度の猛暑日になるそうだが、標高1600mほどのここまで上がってくると、さすがに吹く風が涼しい。
(小屋平バス停)
元々は梅雨の晴れ間を狙っての山行になるはずだった。週の初めの時点では、今週・来週も梅雨空が続くが、土日だけは晴れ間もあるという予報だったからだ。この時期のことだから、すっきりとは晴れなくても雨さえ降らなければ、ぐらいに考えて、小金沢山(2014m)への山行を計画したのだが、蓋を開けてみたら昨日の土曜日に関東甲信地方の梅雨明けが宣言され、今日は朝から真夏の青空が広がっている。予想外の展開になったが、急にやってきた夏山をともかくも今日は楽しむことにしよう。
08:50 小屋平 → 09:50 石丸峠
小屋平バス停からの今日のルートは、歩き始めに案外急な登りが続く。深い森の中で標高差100mほどを登ると一旦林道に出て、その250mほど先から改めて山道が始まる。そこも最初は案外傾斜がきついのだが、しばらくするとそれが一服して、そこから先は落葉松の森を緩やかに登っていく快適なコースだ。
そのうちに落葉松の木々も途切れ途切れになり始め、初めて小金沢山が姿を現す場所に出る。その右奥には、久しぶりに見る富士山。梅雨の時期でご無沙汰していたら、いつの間にか夏姿になっていた。
やがて足元にクマザサが現れると、そこから先は草原状の地形が続く。眺めの良い所で、緩斜面をトラバース状に山道が続き、小屋平バス停からちょうど一時間ほどで石丸峠に着いた。
10:00 石丸峠 → 11:05 小金沢山
石丸峠からコースは南へと方向をかえ、緩やかに登って1957mピークに着くと、そこからは笹原の続く見晴らしが飛び切り良い緩やかな下り道がしばらく続く。眼下に大菩薩湖を眺め、晴れれば彼方に南アルプスの山々が連なっているのだが、今日の南アは雲の中。梅雨開けが宣言された地域とそうでない地域との差が、今日の空模様には出ているようだ。
笹原がやがて終わると、小金沢山への登りが始まる。それまでの明るくて地面の水はけの良い地形から一転し、深い緑に覆われて足元のジメジメとした山道になった。滑りやすく、木の根に足をとられたりしやすいので、用心しながら歩く。
一面の笹原も開放的でいいが、鬱蒼とした森の中というのも、よく見てみれば不思議な魅力に満ちている。ふと木立の根元を眺めると、そこに自生する小さな緑の数々が、まるでフラワー・アレンジメントでもされたかのようにバランスよく集まっていた。
森の中を頑張って登りつめ、その傾斜が緩くなると、その先にはもう殆ど登りはない。そして「不思議の国のアリス」に出て来る迷路を思い出させるような、細い木々が山道の両脇にびっしりと並ぶようになると、小金沢山の頂上も近い。
10:05 小金沢山のピークに到着。そこから眺める富士山は、石丸峠への道の途中で見てた時よりもまた少し雲を纏ってしまったが、大月市の「秀麗富嶽十二景」にも数えられるだけあって、ここからの富士はやはり魅力的である。そして、奥多摩方面の山々もよく見えている。
(小金沢山頂上からの富士)
今日の行程ではこの山頂が折り返し点にして最高地点なのだが、今日は先ほどの笹原で昼食にしてみようと考えていたので、ここではフルーツを食べたり喉を潤したりする程度の休止にとどめ、私たちは来た道を戻り始めた。
11:20 小金沢山 → 12:05 狼平
再び深い森の中。そこを歩いていても決して実感することはないのだが、実は私たちが歩く山道の地下深くには大きな仕掛けが存在している。
私たちが山の上から眺めた大菩薩湖は、1999年に竣工した上日川ダムによってその姿を現わしたダム湖である。小金沢山の尾根の西側にあって、そこから流れる日川は甲府盆地で笛吹川に合流し、最後は富士川となって駿河湾に流れ出る。一方、尾根の東側の谷は桂川の支流で、それはやがて相模川へとつながる。私たちが歩いている尾根はまさに分水嶺なのだが、実は上日川ダムからこの尾根を地下深くで横断する水路が建設されていて、ダムの水は尾根の東側の葛野川発電所へと流れ落ちるようになっている。
夜間の余剰電力を利用して葛野川発電所から上日川ダムまで水を揚げ、電力消費量の多い昼間は水を再び葛野川発電所に落として発電をする、いわゆる揚水発電が行われているのだ。しかも700mを超えるその落差は世界最大規模なのだそうである。
水力発電というのは、水を流せばすぐに発電できるから、昼間のピーク時の電力の需給を調整するのに向いているという。首都圏への電力供給のために、ここではまさに分水嶺を越えて沢の水を利用している訳で、私たちの都市生活はこうした壮大な仕掛けによって支えられているのだ。
深い森が終わり、私たちの目の前に笹原が再び広がり始めた。その広い笹原の中に一本の背の高い木がぽつんと立っていて、ちょうどいい日陰を作っている。狼平という、その牧歌的な風景にはミスマッチな地名が付されているが、今日はそこで昼飯にしよう。
真っ青な空と一面の笹原。緑豊かな山の尾根。ムクムクと湧く夏雲。思いがけずもこのタイミングで梅雨が明け、今日は一気に夏山の風情になった。狼平で、私たちはそれを存分に楽しんだ。
12:35 狼平 → 12:55 石丸峠 → 13:40 小屋平バス停
狼平から1957mピークまでは、しばらく笹原の中の登り返しになる。だが、今日は眺めがいいから登りも苦にならない。振り返れば小金沢山から先の小金沢連嶺がどこまでも続き、雁ヶ腹摺山もよく見えている。その奥に遠く続いているのは丹沢あたりだろうか。
石丸峠に着き、今朝歩いてきた山道をたどると、やがて笹原も終わって落葉松の森に入る。ちょうどコース・タイム通りのペースで歩き、私たちは汗を拭き拭き小屋平バス停に戻った。
歩行時間4時間ほどの軽めのコースではあるが、小金沢山はいい山だ。このバス路線を使って、多くの登山者は百名山の大菩薩嶺を目指すのだが、それに比べて小金沢山は、そこに至る山道からも、その山頂からも眺めは素晴らしいのに、いつもひっそりとしている。そこがいいのだ。
秋になったら、天気の良い日を選んで、また山仲間たちと訪れてみようか。
それが定刻通りの08:01に甲斐大和駅に着くと、私たち5人を含むかなりの人数の登山客が列車を降り、階段を上がって改札口へと急いだ。外ではこの駅前を08:10に出る上日川峠行きのバスが待っている。小型のバスなので日曜日の今日はもう一台増発されていて、小さな駅前は俄かに慌ただしくなった。
補助席まで含めて満席になった小型バスは定刻に発車。甲州街道をすぐに左にそれて県道218号(大菩薩初鹿野線)に入り、急な上り坂ではエンジンをウンウンと唸らせながら走って、8:45に小屋平というバス停に到着。私たちを含めて十数人の登山客がそこで降りた。今日は下界では34~35度の猛暑日になるそうだが、標高1600mほどのここまで上がってくると、さすがに吹く風が涼しい。
(小屋平バス停)
元々は梅雨の晴れ間を狙っての山行になるはずだった。週の初めの時点では、今週・来週も梅雨空が続くが、土日だけは晴れ間もあるという予報だったからだ。この時期のことだから、すっきりとは晴れなくても雨さえ降らなければ、ぐらいに考えて、小金沢山(2014m)への山行を計画したのだが、蓋を開けてみたら昨日の土曜日に関東甲信地方の梅雨明けが宣言され、今日は朝から真夏の青空が広がっている。予想外の展開になったが、急にやってきた夏山をともかくも今日は楽しむことにしよう。
08:50 小屋平 → 09:50 石丸峠
小屋平バス停からの今日のルートは、歩き始めに案外急な登りが続く。深い森の中で標高差100mほどを登ると一旦林道に出て、その250mほど先から改めて山道が始まる。そこも最初は案外傾斜がきついのだが、しばらくするとそれが一服して、そこから先は落葉松の森を緩やかに登っていく快適なコースだ。
そのうちに落葉松の木々も途切れ途切れになり始め、初めて小金沢山が姿を現す場所に出る。その右奥には、久しぶりに見る富士山。梅雨の時期でご無沙汰していたら、いつの間にか夏姿になっていた。
やがて足元にクマザサが現れると、そこから先は草原状の地形が続く。眺めの良い所で、緩斜面をトラバース状に山道が続き、小屋平バス停からちょうど一時間ほどで石丸峠に着いた。
10:00 石丸峠 → 11:05 小金沢山
石丸峠からコースは南へと方向をかえ、緩やかに登って1957mピークに着くと、そこからは笹原の続く見晴らしが飛び切り良い緩やかな下り道がしばらく続く。眼下に大菩薩湖を眺め、晴れれば彼方に南アルプスの山々が連なっているのだが、今日の南アは雲の中。梅雨開けが宣言された地域とそうでない地域との差が、今日の空模様には出ているようだ。
笹原がやがて終わると、小金沢山への登りが始まる。それまでの明るくて地面の水はけの良い地形から一転し、深い緑に覆われて足元のジメジメとした山道になった。滑りやすく、木の根に足をとられたりしやすいので、用心しながら歩く。
一面の笹原も開放的でいいが、鬱蒼とした森の中というのも、よく見てみれば不思議な魅力に満ちている。ふと木立の根元を眺めると、そこに自生する小さな緑の数々が、まるでフラワー・アレンジメントでもされたかのようにバランスよく集まっていた。
森の中を頑張って登りつめ、その傾斜が緩くなると、その先にはもう殆ど登りはない。そして「不思議の国のアリス」に出て来る迷路を思い出させるような、細い木々が山道の両脇にびっしりと並ぶようになると、小金沢山の頂上も近い。
10:05 小金沢山のピークに到着。そこから眺める富士山は、石丸峠への道の途中で見てた時よりもまた少し雲を纏ってしまったが、大月市の「秀麗富嶽十二景」にも数えられるだけあって、ここからの富士はやはり魅力的である。そして、奥多摩方面の山々もよく見えている。
(小金沢山頂上からの富士)
今日の行程ではこの山頂が折り返し点にして最高地点なのだが、今日は先ほどの笹原で昼食にしてみようと考えていたので、ここではフルーツを食べたり喉を潤したりする程度の休止にとどめ、私たちは来た道を戻り始めた。
11:20 小金沢山 → 12:05 狼平
再び深い森の中。そこを歩いていても決して実感することはないのだが、実は私たちが歩く山道の地下深くには大きな仕掛けが存在している。
私たちが山の上から眺めた大菩薩湖は、1999年に竣工した上日川ダムによってその姿を現わしたダム湖である。小金沢山の尾根の西側にあって、そこから流れる日川は甲府盆地で笛吹川に合流し、最後は富士川となって駿河湾に流れ出る。一方、尾根の東側の谷は桂川の支流で、それはやがて相模川へとつながる。私たちが歩いている尾根はまさに分水嶺なのだが、実は上日川ダムからこの尾根を地下深くで横断する水路が建設されていて、ダムの水は尾根の東側の葛野川発電所へと流れ落ちるようになっている。
夜間の余剰電力を利用して葛野川発電所から上日川ダムまで水を揚げ、電力消費量の多い昼間は水を再び葛野川発電所に落として発電をする、いわゆる揚水発電が行われているのだ。しかも700mを超えるその落差は世界最大規模なのだそうである。
水力発電というのは、水を流せばすぐに発電できるから、昼間のピーク時の電力の需給を調整するのに向いているという。首都圏への電力供給のために、ここではまさに分水嶺を越えて沢の水を利用している訳で、私たちの都市生活はこうした壮大な仕掛けによって支えられているのだ。
深い森が終わり、私たちの目の前に笹原が再び広がり始めた。その広い笹原の中に一本の背の高い木がぽつんと立っていて、ちょうどいい日陰を作っている。狼平という、その牧歌的な風景にはミスマッチな地名が付されているが、今日はそこで昼飯にしよう。
真っ青な空と一面の笹原。緑豊かな山の尾根。ムクムクと湧く夏雲。思いがけずもこのタイミングで梅雨が明け、今日は一気に夏山の風情になった。狼平で、私たちはそれを存分に楽しんだ。
12:35 狼平 → 12:55 石丸峠 → 13:40 小屋平バス停
狼平から1957mピークまでは、しばらく笹原の中の登り返しになる。だが、今日は眺めがいいから登りも苦にならない。振り返れば小金沢山から先の小金沢連嶺がどこまでも続き、雁ヶ腹摺山もよく見えている。その奥に遠く続いているのは丹沢あたりだろうか。
石丸峠に着き、今朝歩いてきた山道をたどると、やがて笹原も終わって落葉松の森に入る。ちょうどコース・タイム通りのペースで歩き、私たちは汗を拭き拭き小屋平バス停に戻った。
歩行時間4時間ほどの軽めのコースではあるが、小金沢山はいい山だ。このバス路線を使って、多くの登山者は百名山の大菩薩嶺を目指すのだが、それに比べて小金沢山は、そこに至る山道からも、その山頂からも眺めは素晴らしいのに、いつもひっそりとしている。そこがいいのだ。
秋になったら、天気の良い日を選んで、また山仲間たちと訪れてみようか。
2013-07-08 23:03
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