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春の嵐 [季節]

 新年度に入って最初の金曜日、4月5日は二十四節気の「清明「」にあたる日になった。

 「万物がすがすがしく明るく美しい頃」という意味だそうで、改めて周囲を見渡せば、桜に続いて様々な花が咲き、木々の緑も日々勢いを増している。中華文化圏ではこの清明節に先祖の墓参りをするのだそうだが、名目は何であれ外に出かけるにはいい季節なのだろう。

 だが、清明という語感とは裏腹に、日本の春は風が強くて埃っぽい日が案外と多いものだ。この週末もまさにそのパターンで、東シナ海で発生した二つ玉の低気圧が、急速に発達しながら東へと移動。日本列島は風の強い日が二日続いた。(いや、北日本ではまだ続いている。)
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 金曜日の時点での天気予報では、東京地方には土日とも傘マークが付いていた。確かに土曜日は午後からずっと雨で、昼頃は一時風も強かったので、なるほど予報通りなんだなあと思っていたが、日曜日の朝早く目が覚めると、窓の外は光が眩しい。カーテンを開けると、街路樹は風に揺れているが、空は真っ青に晴れ上がっている。そうなると、じっとしている手はない。

 今日は家族それぞれに予定があるので、私は一人、11時前から散歩に出かけることにした。このところ体を動かす機会も限られていたから、今日はせっせと歩くことにしよう。強い南風のために気温はぐんぐんと上がり、この時点で既に20度を超えていた。初夏のような陽気で、Tシャツ一枚でも歩けそうだ。
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 家の前の並木道では既に桜吹雪も終わり、いつの間にか緑が濃くなり始めた。紅白のハナミズキも、サクラに誘われたのか、4月のまだ上旬だというのにもう花を開いている。
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 強風が大気中の塵を吹き飛ばしてくれたのか、とにかく今日の空は青い。遠くはどこまで見えるのか、後楽園の駅前にある文京シビックセンター25階の展望ラウンジへと上がってみると、新宿副都心の高層ビルの左奥に丹沢の大山がしっかりとその姿を見せている。眼下の緑は小石川後楽園だ。他にも大菩薩嶺や奥多摩の雲取山、東の方には筑波山もはっきりと見えていて、何だ、これなら山へ行っていればよかったかと思ってはみたが、まあ今日の場合は都会から山を眺めている方がいいだろう。
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 緑の中を歩きたい私は、それからメトロに乗って青山一丁目へ。青山通りを渡って東へ向かえば神宮外苑だ。名物のイチョウ並木は、初々しい緑が始まったばかり。そして、この広い緑地の中では八重桜がまさに見頃になっていた。だが、風が強い今日は草野球のグラウンドから土埃が上がるので、この付近の散歩はちょっといただけない。
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 外苑から更に表参道に出ると、ここでも姿を見せ始めた街路樹の緑が鮮やかだ。この陽気に誘われて人々が出て来たので、歩道は大変な混雑。それも、洋の東西を問わず外国人が多い。
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 表参道を下り、明治神宮の境内に足を伸ばすと、さすがに原宿駅前までの喧騒が嘘のようだ。そして、ここに来たら拝殿に参拝して終わりでは勿体ない。拝殿から更に代々木側の宝物殿のある緑地へ行ってみよう。そこでは驚くほど豊かな都心の緑を楽しめるのだが、訪れる人は少ない。
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 私が渋谷区立の小学校に通っていた頃、毎年5月の天気の良い日に、図画工作の授業の一環としてこの明治神宮での校外写生会があった。いつもこの宝物殿前の芝生まで皆でやって来て、周囲の景色を描くのだが、その時に、子供心にも明治神宮の新緑は爽やかで気持ちがいいなと思ったものである。そんな遠い記憶が大人になっても体の中に残っているのか、私は新緑の頃の散歩がこの上なく好きだ。
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 久しぶりに外をたっぷり歩いた日曜日の午後。やがて家族もそれぞれの出先から帰って来て、その日の夕食には、今が旬の食材が並んだ。山ウド、コゴミ、ホタルイカ、空豆。そして家内が筍ご飯を炊いてくれた。嬉しい季節だ。その頃には、一日強く吹き続けた外の風も、だいぶおさまっていた。

 「春嵐」や「春疾風」はこの時期の季語だ。「メイ・ストーム」というのも、実は和製英語であるらしい。そして、二十四節気の「清明」の次は「穀雨」だから、雨も降りやすい。まさにお天気次第ではあるのだが、今年もやってきた清らかで明るい季節を精一杯楽しみたいと思う。
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