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山と旧友たち [山歩き]

 日曜日は、久し振りに山歩きで一日を過ごした。おそらく、今年最後の山である。

 青梅線の御嶽駅からバスとケーブルカーで御岳山へ上がり、そこから尾根伝いに大岳山(1,266m)を越え、更に南東に伸びる馬頭刈尾根を下りるというコースだ。「奥多摩入門編」のように考えていたが、下りが長く、しかも急斜面をどんどん降りる道が続く、案外と手ごたえのあるコースだった。

 今年は縁があって中学時代の同期生たちと山へよく出かけた。SNSを活用しながらそうした集まりを主催してくれている旧友T君のおかげだ。4月の半ばから始めて、今回で13回目の山。平均すると月1.4回のペースで山へ行ったことになる。T君と一緒に高校で山岳部の活動に打ち込んでいた私にとって、山登りは「昔取った杵柄」の一つであるが、この歳になってからも旧友たちとこのようなペースで再び山に行けるのは、本当にありがたいことだ。今回も、そういう仲間と4人(男2・女2)での山行になった。

 朝の奥多摩行きの電車は、かなりの混雑だった。その多くが御嶽駅で降り、向かい側のバス停に殺到してあっという間に長い行列ができてしまった。中高年の登山ブームもここまで来たかと驚いたが、実はケーブルカーの乗り場を起点とする山岳マラソン大会がこれから始まろうとしていたのだった。その混雑を尻目にケーブルカーで上がる登山客は、車輛の座席がちょうど埋まる程度の人数。12月に山歩きをする人は、やはりこれぐらいの数がいいところなのだろう。

 ケーブルカーを降り、土産物屋の並ぶ舗装道路を抜け、坂を登って御岳神社の前を通り過ぎると、そこから先は山道である。葉がすっかり落ち、針のようになった木々の梢が続いている。硬質ガラスのような青空に雲が流れ、一時日差しがが遮られるたびに、山肌はその色合いを微妙に変える。こういうひっそりとした味わいは、いかにも12月の山である。山道に降り積もった落葉は、時にくるぶしを埋めるほどだった。
大岳山13.jpg
 今日のコースは登りが少ないと高を括っていたが、歩き出しから大岳山荘までの1時間半ほどの道には、案外しっかりとした登りがあった。そして、森の中の大岳山荘から大岳山頂上までは、ちょっとした岩場も含めて徒歩15分の急登が続く。遠くからもよく見える、大岳山のとんがり帽子のような山頂部分である。それは樹林に覆われてはいるが、三角点の立つところは南の方向に展望が開けていた。しかしこの日は、お目当ての富士山は全体が雲の中。周囲の御前山や三頭山、そして鷹の巣山から七ツ石山、雲取山へと続く奥多摩の主稜線はよく見えていた。

 いささか混雑気味であった大岳山の頂上では写真撮影だけに留め、我々は大岳山荘まで下りて、馬頭刈尾根を先へと進んだ。笹藪の続く斜面に、落葉の降り積もった山道が一筋。その道はやがて尾根筋をたどるようになり、葉の落ちた木の間越しに下界の谷や更に向こうの山々が見える、気分のいいコースである。このあたりまで来ると登山者も少なく、あたりは静寂そのものだ。大岳山の頂上にいた時には半分ぐらい残っていた青空も、気がつけばすっかり雲に覆われてしまった。小さな起伏をいくつか越え、小高い山の上に東屋のある富士見平という場所で、我々は昼食を取ることにした。

 T君と私が、持ってきた登山用のコンロで冷凍の鍋焼きうどんを温め、四人で食べる。今日は山の上でも風がなく、思っていたほど寒さは感じないが、それでも吐く息は白くなり、じっとしていると冷え込んでくるので、やはり温かい食べ物はありがたい。そして、山の中での食事はやはり気分がいいものだ。皆すっかり元気を取り戻した。この場所からは大岳山の特徴ある山頂部分がよく見えていた。
大岳山10.jpg
 富士見平から先も尾根沿いの道だ。途中で、ロッククライミングの練習場として使われる「つづら岩」を通り越し、その先も小さな起伏が続く。馬頭刈山がだいぶ近くなると、バス停への下山道が稜線から右へと降りていた。急斜面に落葉がふかふかに積もり、何度も足を滑らせながら、山を下る。杉の樹林帯に入ってからも、急な坂道が40分近くも続く。さすがに両の膝に疲労を感じた頃、やっと下界の村落が見えてきた。森の中は早くも薄暗くなってきたが、もうひと頑張りだ。千足バス停に着いたのは、バスの到着時刻(15:48)の4分前だった。

 私は学生時代に大岳山へ一人で出かけたことがある。今回と同じ12月の、冷え込みの厳しい日であった。ケーブルカーなどは使わず奥多摩駅から歩き始める、歩行時間のもっと長いコースを取ったのは、まだ若かったからだろう。もう30年も前のことだ。

 あれから歳月は流れたが、あの時と同じ山を、今回はこの歳なりのペースで楽しむことができた。それも、中学の制服を着ていた頃から本質的にはちっとも変わっていない同級生たちと一緒に、昔と同じような遊び心を共有しながら。こんなに幸せなことがあるだろうか。

 武蔵五日市の駅に向かう路線バスに揺られながら、私は山の楽しさと友のありがたさとを、あらためてかみしめていた。
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コメント 2

T君

すごいね~
文章9割のブログってなかなかない
そんな秀逸な文章にたびたび登場させていただく光栄に浸っています。
昨年4月のあの秀逸な感動的な文章がないのがちょっと残念!

出版狙っているでしょ!サイン入りでほしいな~
by T君 (2010-02-05 01:53) 

RK

早速のコメントをありがとうございました。

何か特別なことを考えているわけではないので、まぁ自分のペースで続けて行ければと思っています。

山ネタと鉄道ネタが多くなるかな。(笑)
by RK (2010-02-05 20:50) 

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