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春を待つ [季節]

 2月3日の今日は、節分である。

 一昨日の夜、気圧の谷が通過して関東甲信地方にも雪を降らせた後、今度は今冬一番の強い寒波が南下して、東京もそれにすっぽりと覆われている。明日は暦の上では立春だが、これから週末まで、東京は最低気温が零度の日が続くそうだ。「節分寒波」とでも名づけられるのだろうか。私も、今朝は久しぶりにウールのコートを着て出勤することになった。

 節分という言葉は「季節を分ける」という意味で、本来は四季それぞれが始まる日(立春、立夏、立秋、立冬)の前日を指すのだそうだ。それが、何と言っても立春が一年の始まり、大きな区切りであることから、節分といえば立春の前日、つまり春の節分を指すことになっていったという。

 ところで、今年は再来週が中国などでの旧正月休みである。2月14日(日)が今年の場合は旧暦の元旦にあたるそうだ。ならば、同じ「一年の始まり」なのに、旧正月と立春はどう違うのか、旧暦の大晦日と節分はなぜ同じ日でないのか、という素朴な疑問が湧いてくる。

 これを機に整理をしてみると、節分や立春などの「二十四節気」は、太陰暦を補完するものであるようだ。大陰暦は新月を毎月の1日、満月を15日、そして1年を12ヶ月と定めた暦である。月の公転が29.5日だから、1年は354日ほどになり、地球の公転(365日)とズレが生じる。他方、二十四節気はあくまでも太陽の動きを観察し、春分、夏至、秋分、冬至の各日を定めてから四季を六等分した暦なのだ。これを太陰暦に組み込み、暦と実際の季節とのズレが蓄積されると閏(うるう)月を設ける。これが太陽太陰暦である。昔の人々は、月の満ち欠けで日々の暦を把握しつつ、一年サイクルで動く太陽の位置にも同時に注意を払っていたということか。今や、腕時計や携帯電話のデジタル表示でしかカレンダーを見ないような我々はもう失ってしまった、大自然に対する鋭い観察力なのだろう。

 節分が二十四節気ベースの「大晦日」だとすれば、それは一年の締めくくりの日でもある。元々中国で、この日に悪鬼・疫癘(えきれい)を桃の木で作った弓矢で追い払う、追儺(ついな)という行事があり、それが平安時代に日本でも、前年の邪気を祓う宮中の年中行事になったそうだ。今のように、煎った豆を撒き(豆は読みが「魔滅」に通じる)、「福は内、鬼は外」という掛け声をかけたりするようになったのは、室町時代になってからで、寺社に人々が集まり、年男が豆を撒く形になっていったという。公家のしきたりが次第に庶民にも普及していったのは、いかにもこの時代らしいところである。
節分.jpg
 ついでながら、頭に一本ないし二本の角がある「鬼」という魔物は、日本固有のものであるらしい。中国では鬼(き)とは死者の魂のことだそうだ。日本語でも「幽鬼」はそんなイメージだろうか。もちろん、多神多仏の日本であるから、山岳信仰やら仏教やら土俗的な迷信やら、色々なものが混ざって出来上がったものなのだろう。

 明日は、立春。昨年12月22日の冬至から一カ月半が経った。冬至から夏至までの半年は、日ごとに昼間の時間が長くなる6ヶ月間なのだが、早くもその四分の一が過ぎたことになる。国立天文台のHPに載っているデータによると、昨年の冬至の日に比べて、明日は日の出が8分早くなり、方角も9度北の位置から太陽が昇るのだそうだ。

 寒さはまだ続くが、それでも季節は着実に巡っている。私も日々を大切に暮らしていこうと、改めて思う。
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コメント 2

Corton Charlemagne

頑張って続けてください!

RKさん、はじめまして(笑)
季節の移ろいを大自然で感じ、
日本の伝統文化などを通じて先人たちの日常や英知に思いを馳せる
家族想いの鉄道(元)少年。

歴史をはじめとして多方面にわたる深い知識と
汽車ポッポが大好きだった頃と変わらない好奇心をフルに活かして、
RKさんのアンテナにかかった思いを発信してください。

それにしても、思わず惹きこまれる文章・・・素晴らしいです。
表現者としてのご活躍も楽しみです!
by Corton Charlemagne (2010-02-05 13:21) 

RK

暖かいコメントをありがとうございました。それにしても美味しそうなお名前ですね。(笑)

マイペースで続けて行ければと思っていますので、お暇があったら立ち寄ってみてください。

RK
by RK (2010-02-05 20:59) 

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