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8人より9人 (1) [スポーツ]

 梅雨である。

 この時期特有の蒸し暑さが続く中、首都圏の通勤風景からはネクタイ姿が殆ど見られなくなった。震災と原発事故に起因する節電要請があってのこととはいえ、待ったなしで「クールビズ」を始めてみると、電力供給に充分な余裕があったとしても、そもそも日本の夏に背広やネクタイは要らなかったのではないかとも思える。

 暑さをしのぐための新たなグッズも色々と登場しているようだが、皆で工夫し、個々人が節度を保ちながら、日本ならではの省エネで、ともかくも暑い夏を乗り切って行きたいものである。

 「社会を挙げて節電が強く求められている中で、煌々と電灯をつけてナイターの試合をやるのはいかがなものか。」
 開幕の時期を巡って一時は大きな議論になった日本のプロ野球(NPB)も、先週末で早くもセ・パ交流戦の全日程を終えた。

 その交流戦は、78勝57敗9分で今年もパ・リーグ゛が圧倒。通算3度目の優勝を飾ったホークスは、18勝4敗2分という過去最高勝率を記録。これで2005年の交流戦開始以来、優勝は全てパ・リーグのチームだ。
NPB Interleague 01.jpg

 パ・リーグ優位が続く交流戦について、多くの野球解説者たちが指摘するのは、パ・リーグだけが実施している指名打者(DH)制の下で鍛えられたパ・リーグ投手陣の存在である。

●投手が打席に立つことがないので、リードされていても先発投手が力投を続けていれば、途中で替えられることが少なく、先発・中継ぎ・クローザーの継投策を組立てやすい。
●相手チームの打線が投手のところで途切れることがないため、投手は常に全力で臨む必要があり、その分だけ鍛えられる。

 なるほど、それぞれに一理あるだろう。だが、「打者は8人より9人」というDH制は昨日今日始まった制度ではない。元々は米・大リーグ(MLB)で、極端な「投高打低」で試合がつまらなくなって人気を落としたアメリカン・リーグが、人気挽回策として考案し、1973年のシーズンから導入したものである。これに倣って、同じく観客数の低迷に苦しんでいたNPBのパ・リーグが1975年からDH制導入に踏み切った。つまり、日米共にDH制は片方のリーグで30年以上も続いてきたのだから、もしDH制で鍛えられた方が有利なら、DH制を導入していないリーグとの対戦成績には既に顕著な差が出来ていてもおかしくない筈である。

 両リーグの激突といえば、シーズン最後の頂上対決、MLBのワールド・シリーズとNPBの日本シリーズだ。ワールド・シリーズでは1986年から、ア・リーグのチームの主催試合でDH制が導入されている。日本シリーズでは翌1987年から同様の対応になった。

 日本シリーズから先に見ていくと、1987年から2010年までの24年間で、シリーズ制覇はパ・リーグ゙が13回(計70勝)、セ・リーグが11回(計67勝)と、殆ど互角である。

 一方のワールド・シリーズは、1986年から2010年までの25年間(但し、1994年はストライキのためシリーズはなかった)の実績は、ア・リーグ14回(計73勝)、ナ・リーグ11回(計58勝)と、ややア・リーグ優位に見えるが、実はこの間にあのニューヨーク・ヤンキースが7回出場していて、その内5回を制覇しており、通算25勝9敗という圧倒的な強さを見せている。DH制云々以前に、「金満補強」にモノを言わせて強いチームを作ったという要素が大きいだろうから、ヤンキースの出場年を除いて数えてみると、シリーズ制覇はア・リーグ9回(48勝)、ナ・リーグ8回(49勝)と、全くの互角といえる。
Yankees.jpg

 やはり、日本シリーズやワールド・シリーズの場合、シリーズまで勝ち上がったチームの個別事情が大きく、DH制でやってきたから有利、そうでなかったから不利とは必ずしも言えないようだ。

 となると、NPBのセ・パ交流戦に相当する、MLBの「インターリーグ」の結果を眺めてみる必要があるだろう。

 MLBのインターリーグは1997年のシーズンから始まった。1994年の秋から半年ほど続いたMLBの労使紛争の中、選手会の主導でストライキが行われてファン離れが激しくなったことから、リーグを越えた地域対決が見たいというファンの要望をいれて実施されるようになったものだ。

 但し、「地域対決」が主体だから、東地区・中地区・西地区でそれぞれ同地区のア・リーグとナ・リーグのチームが対戦するだけで、地区を越えた両リーグの対戦はなく、試合数も各チームが15~16試合ずつと、NPBのセ・パ交流戦(各チーム24試合)よりも少ないぐらいだ。従って、公平性にはやや疑問符がつくが、ともかくも長いシーズンの成績にカウントされる真剣勝負に変わりはない。

 1997年から2010年まで、過去14年のインターリーグにおける勝ち越しはア・リーグが10回、ナ・リーグが4回と、DH制を導入しているア・リーグが圧倒している。14年間でのア・リーグの勝ち越しが通算で154勝。それでも2005年までは両リーグが相応に拮抗していたが、2006年以降はア・リーグが大きく勝ち越す年が続いている。
MLB Interleague 01.jpg

 地区別・チーム別に見てみると、インターリーグで「貯金」を積み重ねてきたのは、いずれの地区もア・リーグの2~3の球団だ。途中で新球団が加わったり、中地区でブリュワーズがア・リーグからナ・リーグへ移ったりした経緯があるので、数字は合わないが、いずれにしてもア・リーグが優位である。特に中地区と西地区では両リーグ間に大きな差がついている。個別の名前を挙げてみれば、各地区で上位をキープしているア・リーグの各球団は、資金力があってプレーオフやワールドシリーズ゙の常連ばかりだ。カネの力か、それともやはりDH制はチームを強くするのか、この数字を見るだけでは何とも言えないところだ。
MLB Interleague 02.jpg

 それでは我がNPBはどうであろうか。
(to be continued)


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