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彼岸の翌日 - 小仏城山・景信山 [山歩き]

 JR相模湖駅から路線バスに乗って10分弱。千木良バス停で降りると、あたりの水田は実りの季節を迎えていた。
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 9月24日、秋分の日に続く土曜日の今日は、朝から久しぶりに爽やかな青空が広がっている。三日前に駆け抜けた台風が空の塵の一切合財を吹き飛ばしてくれたのか、空の青さが今日は一段と鮮やかだ。半日の山歩きには格好の日和になった。

 ちょうど一週間前に風邪をひき、熱を出して前回の三連休は寝ていることが多かったのだが、その後も咳が残って、どうも今ひとつシャキッとしない。やっと秋らしくなった今日は、半日山を歩いて身体を目覚めさせてみようか。そんな思いもあって、今朝は一人で小仏城山の登山道へとやってきた。

 朝7:30に新宿を出る京王線の特急に乗り、高尾でJRに乗り換えて一駅先の相模湖で下車。たった一駅ながら、小仏トンネルを抜けるとずいぶんと山の中に入ったような雰囲気になる。そして、10分の接続で路線バスに乗ると、8時45分頃には千木良バス停に到着。交通機関を使って家からdoor-to-door ちょうど2時間で登山口に立てるのは、私にとってはありがたい。
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 おまけに、高尾山の一つ西隣りにありながら、小仏城山へ上がるこの道が高尾山のあの喧騒とは無縁なのも気に入っている。尾根伝いに景信山へ上がれば広い展望が待っているし、その先の尾根道は、時に奥多摩の山々を遠く展望できるしみじみと静かな道だ。そして、短い休憩を含めても4時間ちょっとで相模湖駅まで降りてくることができる。今日で三回目だが、これからも一人で山を歩く時のホーム・コースの一つにしたいと思っている道である。

 農家の脇を通って突き当たりを左に曲がり、登山道を20分ほど上がると、道端のお地蔵さんの背後を飾るように、ヒガンバナがひっそりと姿を見せている。山もお彼岸である。
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 それにしても、今日の山道は緑の絨毯のようだ。と言っても、それは芝生や下草の緑ではない。

 水曜日に本州に上陸した台風15号。それは山梨県を横断したから、このあたりも相当な暴風雨だったのだろう。その時に吹き落とされたおびただしい量の常緑樹の葉や枝が、山道を埋めているのだ。更に15分ほど進むと、一本の大きな倒木が行く手を塞いでいた。嵐の後に山に入るとこういう体験をすることになるのだが、今日はこの後も下山までの間に、真新しい倒木を乗り越えたのが全部で十箇所近くあった。
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 山道の傾斜が緩くなり、左手の谷を隔てて今日のコースの後半部分の尾根が見え隠れするようになると、最後の登りがあり、森を抜けて小さな草原状の地形を登れば、意外にあっけなく小仏城山の山頂に飛び出す。登山口から50分ほどである。

 振り返ると、丹沢西部の大室山(1,588m)が目を引くが、背後の富士は雲の中だ。丹沢の山々はまずまずよく見えていて、大山の左側には相模湾が遠く輝いている。山頂は高尾山から足を伸ばしてきた登山客で、朝早くからそこそこの賑わいだ。山頂の東側に出てみると、晴天の下に関東平野が広がっていて、押上のスカイツリーも見えている。
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(小仏城山から大室山方面を望む)

 急ぐ旅でもなし、こんな眺めをのんびりと楽しんでいてもいいのだが、一人で来る山は、ろくに休みを取らずに先へ進んでしまうことが多い。今日もそういうパターンになりそうだ。

 昨日の朝はこのあたりも小雨が降ったはずだ。山頂から小仏峠へと下る北斜面は、山道が少しぬかるんでいる。スリップしないように気をつけながら下ると、峠の手前から眺め下ろす相模湖は土色に濁っていた。これも台風の大雨の名残なのだろう。
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 小仏峠から20分ほど快調に登り返すと、これまたあっけなく景信山の頂上に着く。数多くのベンチが用意され、眺めのいいピークだ。ここからの丹沢方面の眺めを楽しみ、風に揺れるススキの穂に秋を思い、東京方面のワイドな眺めに両手を広げる。一週間前は風邪で寝込んでいたことなんかは忘れてしまって、今日も山へやって来たことの幸せを体いっぱいに感じる一時である。
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(景信山頂上にて)

 訳もなく、また先を急ぐ。

 景信山の山頂から北西方向に軽く下ると、その先は起伏の少ない静かな尾根道だ。稜線を忠実にたどれば展望のない幾つかのピークを越えるのだが、それぞれ巻き道が用意されているので、ショートカットも出来る。そうではあるが、歩きに来た以上は愚直にピークを拾いながら先を進もう。このあたりも倒木が道を塞ぐ箇所が続く。そして景信山の山頂から50分ほどで、右側に遠く奥多摩の大岳山や御前山を眺められる箇所を過ぎると、間もなく明王峠である。

 南斜面に向かって展望の開けた明王峠。冬ならば陽だまりが暖かいこの場所が、私は好きだ。相模湖を隔てた彼方には西丹沢から道志の山々がゆったりと横たわり、雲のない快晴の日には、その奥に富士山も頭を見せている。その富士は、今日は雲の中にお隠れだが、だからこそまた次回ここにやってくるのが楽しみだ。
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(明王峠で一休み)

 今日初めて、私はここで少しのんびりしたい気分になり、持ってきた食べ物を口にした。コスモスが咲き、栗のイガが青く、ドングリがあちこちに落ちている。標高739m、東京から2時間圏内のこの低山にも、この土地なりの秋が始まっていることが何とも微笑ましい。今日もまた、山にやってきて、本当に良かった。
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 明王峠から南に向かって山道を駆け下りる。急ぐ旅でもないのだから、ゆっくり歩けばいいではないかとも思いつつ、一人だとつい駆け下りてしまう。結局ちょうど一時間ほどで麓の与瀬神社の境内に出た。そこから電車の駅まではものの5分ほどである。
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(与瀬神社の境内。真下は中央自動車道だ)

 相模湖駅を13時40分に出る電車に乗ったので、15時過ぎには家に帰り着いた。それから風呂を浴び、しばし厨房に立つ。程なく家内も外出先から帰ってきたので、冷やしておいた白ワインのボトルを開け、オーブンで焼いたばかりの「生ハムとルッコラのピザ」をつまみながら、夕暮れ前の休日の一時を二人で楽しむことにした。爽やかな秋の初めの、私なりに充実した一日だった。

 明るいうちに帰って来られる山。普段の生活のすぐ外側にいてくれるような山。それが自分にとってのホーム・コースというものなのだろう。

 奥高尾の山々の味わいが、今日もまた一つ好きになった。

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