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天国に一番近い場所 - 蝶ヶ岳・常念岳 (1) [山歩き]

 豊科ICで長野自動車道を降りて県道を西へ向かうと、正面の彼方に高い山々が連なっている。ゆったりとした山容の鍋冠山(2194m)、その右には横長の台形状をした蝶ヶ岳(2664m)、そして尾根をさらに右へたどると、ひときわ目を引くピラミッド形をした山が常念岳(2857m)だ。8月4日(土)の午前7時過ぎ。今朝の安曇野はこれ以上ないような快晴の空の下にある。
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 私たち男女3人ずつの山仲間は一台のクルマに乗り込み、蝶ヶ岳の登山口となる三股駐車場を目指している。前日の金曜の午後に炎暑の東京を発ち、メンバーの一人であるT君が軽井沢に自力で建てた「囲炉裏小屋」で一晩を過ごした。今朝はその小屋を5時過ぎに出て来たから、安曇野まではクルマでちょうど二時間ほどである。私たちは今日から二泊三日で蝶ヶ岳と常念岳に登る計画だ。

 沢沿いに蝶ヶ岳の麓へと入り込んでいく道路を進み、途中で野生のサルの群れに遭遇したりしながら、7時半を回ったところで三股駐車場に到着。夏山シーズンの週末とあって、駐車場をはみ出した車が路肩に並んでいたが、幸い私たちは駐車場の中にスペースを確保することができた。
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三俣駐車場 → 蝶ヶ岳ヒュッテ

 豊科のコンビニで買ったサンドイッチや握り飯で簡単に朝食を済ませ、8時10分に行動開始。林道を15分ほど歩いた所にある登山口で登山届を出すと、そこから先はいよいよ山道だ。すぐに吊り橋を渡り、力水と呼ばれる水場を過ぎると、本格的な登りが始まった。
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 森の中のあふれる緑、頭の上は真っ青な空。たまに右側の展望が開けた時に姿を現す常念岳の岩稜。これは紛れもなく夏の北アルプスだ。学生時代には梅雨が明けると毎年必ず北アに出かけたものだったが、今こうして山道を登りながらその時の感触がよみがえってくるのは、今日の天気のおかげである。ここ数年は梅雨明け宣言の後も今一つ天気が安定しない夏が何度かあったが、今年は久しぶりにしっかりとした夏である。
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 歩き始めて1時間半ほどで、「まめうち平」と呼ばれる休憩ポイントの下に到着。私たちはもう既にかなりの汗をかいている。ここから先は傾斜の緩い道がしばらく続くが、その後はまたしっかりとした登りになる。よく整備された山道なのだが、とにかくひたすら樹林の中を登り続ける道で、ごく稀にしか遠くの展望が得られない、やや単調な印象のあるコースだ。それでもたまに右側に常念岳の姿が見えると、その谷に残る雪渓が少しずつ目の高さまで下りてきて、その分だけ私たちが高度を稼いだことがわかる。

 「まめうち平」から先の登りは、確かに長い。今日は三股駐車場から蝶ヶ岳ヒュッテまで標高差1,300mの登り。小屋泊まりだから荷物の量は知れているとしても、今回参加の女性陣にとっては初めての経験である。疲れが見えてくると、荷物を分けたり休憩をこまめに取ったりして様子を見る。歩行時間がいつしか4時間半を越え、背の高い木がすこしずつ疎らになっていく中で山道がつづら折れになると、右手に見える常念岳にはガスがかかり始めた。時刻は13時を過ぎているから仕方ないのだが、せっかくの晴天。蝶ヶ岳の稜線に上がれば見えるはずの槍ヶ岳や穂高連峰の眺めは、はたして得られるだろうか。
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 そんな思いが私たちの表情に出ていたのか、山道を下りてきた登山者の一人が朗らかな声で私たちを励ましてくれた。
 「頑張って稜線に上がれば、槍・穂の大展望が待ってますよ!」

 元気をもらった私たちは、歩みを進める。それまで西に向かって斜面を直登していた山道は、やがて南に方向を変えて傾斜が少し緩くなる。道の両側には高山植物の花が増えていく。そして大滝山への登山道と分かれると、草原状の斜面を緩やかに登っていく道になった。森林限界を越えて、あたりは草とハイマツと岩ばかりで、一気に視界が広がる。蝶ヶ岳ヒュッテの建物も見えてきた。
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 そして、草原状の地形を登り切った瞬間、今までとは全く異なる風景が目の中に飛び込んできた。それは、青空と夏雲を背景に屹立する、穂高の峰々だった!
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 涸沢の谷を囲むようにして聳え立つ前穂高岳、奥穂高岳、涸沢岳、北穂高岳。その涸沢の手前には前穂の北尾根が立ちはだかり、前穂の左には明神岳が主峰からⅤ峰まで姿を見せている。一時間ほど前に登山者が私たちをはげましてくれた、あの言葉は本当だったのだ。

13時50分、蝶ヶ岳ヒュッテに到着。宿泊の手続きをして部屋へ誘導されたら、荷物を置いて外の景色を楽しむことにしよう。

(to be continued)


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コメント 2

もりママ

ブログにアップされるの、待ってましたよ!!
素晴らしい天気でしたね。
三股からの上り、お姉さまたちよく頑張りました。

高校時代の合宿では、女子はよく行くところ。
なつかしいです。

続きが楽しみ。
by もりママ (2012-08-08 17:41) 

RK

ご覧いただき、ありがとうございました。

穂高や槍の眺めは、やはり我々の山登りの原点なのだと、改めて思いました。

続きも頑張ります!
by RK (2012-08-08 20:43) 

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