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越後への道 [自分史]

 9月22日(日)の早朝、目が覚めると時計は5時40分を指していた。カーテンを開けると、昨日までの快晴に比べれば雲が少し多いものの、まずは穏やかな朝だ。

 今日はなるべく朝早く出発することにしていたので、私と家内、それに娘の三人は早速起き出して身支度を始める。朝食は簡単なものを用意して、クルマの中で食べればいい。一泊分の荷物を乗せて、6時半前にはマイカーで都内の我家を出発することになった。目指すは新潟市である。
here we go!.JPG

 三連休の中日の朝。都心は空いていて道路も順調だ。その後、関越道の練馬入口付近はさすがに少々の渋滞が出来ていた他、関越道に乗った後も川越IC・高坂SA間で15km程度の渋滞が出来ていた。しかし、それも事前の渋滞予測で言われていた範囲のものだし、渋滞といっても実際には30k.m/h程度で列は進んでいる。

 家を出発してからちょうど2時間で上里SAに近づいたので、一休みすることにした。位置は埼玉県の北西の端。このすぐ先は群馬県だ。新潟にいる息子に現在地を知らせるメールを送ると、
「了解っす。長い道なので、しっかり休憩を入れて気を付けて来てくださいなm(_)m」
という返信がすぐにあった、

 上里SAを出ると、程なく藤岡JCTがあり、多くのクルマは左手の上信越道へと分かれていった。軽井沢方面へ向かう人々が多いのだろうか。私たちを含め、関越道をそのまま北上するクルマは少数派で、交通量はぐっと少なくなった。

 高崎JCTで北関東自動車道を分け、前橋ICを過ぎると、いよいよ山の景色が本格的に広がり始める。天気は高曇りで、今日は遠くまで視界が利いている。左手には榛名山、右手には赤城山、共に広大な裾野を持ち、たくさんのピークがある立派な山塊だ。残念ながらドライバーの私は山々の姿に見とれている訳にもいかず、写真も撮れないが、その代わりに「カシミール3D」を使って車窓のイメージを残しておくことにしよう。
Mt. Haruna.jpg
(関越道 前橋IC-渋川・伊香保IC間からの榛名山)

Mt. Akagi.jpg
(同じく 赤城山)

 「おおっ!」
 ハンドルを握りながら私が思わず声を上げたのは、沼田ICの手前だっただろうか。関越道下り線の正面に武尊山(ほたかやま、2158m)が姿を現した時のことだ。利根川と片品川の谷に挟まれた独立峰で、実に立派な山容をしている。私はチラッとしか目をやれないが、峨々とした稜線が印象的だ。
「お山の景色になったら、パパはテンション上がってるね!」
後ろの座席で娘が笑っている。
Mt. Hotaka.jpg
(関越道 沼田IC手前からの武尊山)

 やがて関越道は谷の中へと入っていき、水上ICを過ぎて谷川岳PAが見えて来ると、その先はいよいよ関越トンネルだ。

 長さ11kmの長いトンネル。6割ほど進んだ地点が県境になっていて、いよいよ新潟県に入る。といっても、そこから北陸自動車道の新潟西ICで降りるまで、まだあと140km以上もある。新潟は広い県なのである。

 5~6分ほどトンネルの中を走り続け、土樽PAのある出口をようやく抜けると、越後の空は雲が多かった。

 スキー場の集まる地域を通り抜け、塩沢石内ICを過ぎれば、平地が段々と増えて来る。いよいよ「米どころ」の始まりだ。「魚沼産コシヒカリ」の看板が目につく。どこまでも続く田の面は黄金色に染まり、もうすっかり秋が始まっていた。

 更に一走りで10時半頃に越後川口ICに到着。もう一度休憩を取ることにする。ここは、上越国境から北に向かって流れてきた魚野川と、飯山方面から流れてきた信濃川の本流とが合流する地点で、合流後の信濃川が大きく蛇行しながら北へと流れていく様子を、このICの展望台から眺め下ろすことができる。その眺めを楽しんでいると、娘が売店で新潟県産コシヒカリの「おこわ」を見つけてきたのだが、まるで突きたての餅のようなねっとり感があって、実に美味しい。日本のコメの素晴らしさを改めて実感する。
shinano river.JPG
(ゆったりと蛇行する信濃川)

 そこから先は、いよいよ平野部が広くなり、どこまでも続く水田地帯の中を高速道路が北に向かっている。長岡JCTで北陸自動車道と合流すると、さすがに交通量が増え始めた。そこから更に50kmほどを走り続けると、ようやく新潟西ICだ。一般道へ降りて一度信濃川を渡り、県庁前を通って更に東方向へと走り、左に曲がって昭和大橋で再び信濃川を渡ると、いよいよ新潟市の中心部だ。カーナビが示す通り、息子のアパートには12時半前に着くことができた。
niigata city (bird's-eye view).jpg

 「やあ、どうも。今日はみんなしてスンません。」
 照れ笑いをしながら、アパートの部屋から息子が出てきた。

 昨年の11月下旬から始まった、我家の息子の司法修習。1年間のプログラムの内、最初の10ヶ月の実務修習の場所が新潟市に決まったのが、昨年の10月の初めだった。それを受けて、現地で借りる部屋の物件をアタフタと探し、最低限の引っ越し荷物を取りまとめ、入居をしたのが昨年の11月下旬、ちょうど勤労感謝の日の連休だった。

 その時も、私と家内は入居の手伝いに現地へ行ったのだが、早いもので、あれからもう10ヶ月。今度はそこを引き払って東京に戻る時期になった。今回もちょうど秋のお彼岸の三連休の間に引っ越すタイミングになったので、引っ越し荷物の荷造りと、明け渡し前の部屋の掃除を、家族で手伝うことにしていた。新潟は食べ物も酒も旨い所だから、こういうことなら私は二つ返事だ。それに我家の「ご飯大好き娘」もついて来るというので、それならクルマで出かけようということになった。片道330kmほどの距離になるが、たまには家族揃ってのロング・ドライブもいいだろう。

 私も社会人になりたての頃は、いきなり北陸の富山市が勤務地になったので、現地の独身寮で3年ほどを過ごすことになった。若い頃は人生経験もまだ少ないから、何事もやってみなければわからなかったが、それでも現地での生活は、時の経過と共に何とかなるものだ。だが、赴任・帰任の際の物理的なあれこれは案外面倒なことが多い。引っ越しの荷造りなどは、やはり経験がモノを言う。

 予想していた通り、息子の引っ越し準備はあまりはかどっていなかった。とはいえ、所詮は一人分の引っ越し荷物とIDKのアパートの明け渡しだ。諸々の作業を四人で手分けした結果、3時間ほどで完了。後は、明朝に引越業者が来た時の梱包・搬出の立ち合いだけだ。

 息子のアパートを出て、16時には新潟駅に近いビジネス・ホテルにチェックイン。夕食の場所は17:30から予約をしてあったのだが、今日は昼食をとっていなかったから、その前に何か軽くつまもうかということになり、息子に案内をしてもらって、美味しいという回転寿司屋へ寄ってみることにした。

 新潟は白身の魚が豊富なのだと息子が言う。なるほど、それならばと、ハタハタ、フナベタ、ホウボウ、それにカレイのエンガワなど、地元ならではのネタを注文してみたのだが、どれも淡泊さの中にも魚の旨味がしっかりとあって、実に美味だ。しかもこのクオリティーにして、値段は驚くほど安い。新潟名物のボタンエビももちろん賞味して、オードブル代わりの寿司をサラッと楽しむことができた。
excellent food 01.jpg

 そして、17:30の開店を待ちわびるようにして、席を取ってあった居酒屋へ。この日は家内の誕生日でもあったので、居酒屋といっても相応の場所を選んでおいた。せっかくだから、当地の美味しい食材を楽しむことにしよう。

 ともあれ、一家四人で乾杯!そして、「お誕生日おめでとう!」、「10ヶ月間の独り暮らし、お疲れさま。」、「今日はお手伝い、ありがとうございました!」

 乾杯のお題目は、たくさんある方がいい。何にせよ、家族みんなで支え合いながら、息子の新潟最後の夜を、こうして笑顔で迎えることが出来た。そのことが、嬉しかった。
excellent food 02.jpg

 息子の実務修習の内容はとても充実していたようだし、地方裁判所や地方検察庁、そして弁護士事務所などで、多くの方々に熱心なご指導をいただいたようで、何ともありがたいことである。こうした得難い経験の数々を、本人の今後の仕事に是非とも活かしていってくれればと思う。それこそが、この新潟でお世話になった方々へのご恩返しになるのだろう。

 息子の司法修習を通じて、我家は新潟という土地とご縁ができた。そのことを、これからも大切にして行きたいと思う。

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