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大雪 [季節]


 明け方に目が覚めると、まだ暗い窓の外では道路沿いの植え込みがうっすらと白くなっていた。

 2月8日(土)は東京23区を含めた関東南部も大雪になる。前日からテレビのニュースが繰り返しそう伝えていた。降り始めは土曜日の未明と言われていたが、窓の外の様子はまさにその通りだ。

 起き出したのは7時を過ぎた頃だったが、リビングルームも窓に近づくと外の寒さが伝わって来る。ベランダに出てみると、東京ではあまり見ることない粉雪が頻りに舞っていた。

 それから、家族と共に暖かい食べ物で食卓を囲む。一家四人、土曜日の今日もそれぞれ外に出る用事があるのだが、終日雪だというからなるべく早く帰って来よう。そんな話をしていた。

 私は午前中に神田末広町で一件だけ用事があり、10時過ぎに出かける。用件そのものはあまり時間がかからずに終わったので、そこから雪の都心を御茶ノ水駅まで歩くことにした。登山用の防寒具に身を固め、軽登山靴を履いてきたから足元も万全だ。粉雪が舞い続ける外を歩いても寒くはなく、むしろ体の中がホカホカしてきた。

 神田明神の前を通りかかる。御神殿の前に建つ朱塗りの随神門は、屋根から雪が落ちるからというので、早くも通行規制になっていた。元日の初詣には毎年欠かさず訪れている明神さまも、その雪景色を眺めるというのは、もしかしたら初めてかもしれない。
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 大通りを左に曲がると、その先は神田川にかかる聖橋だ。その手前の左側に、湯島聖堂へと続く道がある。雪を踏みながら階段を降りて行くと、聖堂はモノトーンの世界の中にあった。孔子像も、この雪の中ではさすがに寒そうだ。
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 正午を過ぎて帰宅。暖かいスープを飲みながら改めてネットのニュースを見てみると、東京の天気予報は「吹雪」とか「暴風雪」とか、今までに見たことのないような表現になっている。今日は一日中雪で、夕方からは風が強くなり、降雪のピークは午後9時頃から日曜日の未明にかけてだそうだ。ここまでの天候は、まだ序の口なのだろうか。
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(日本気象協会の天気予報)
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(Yahooの天気予報)

 私はそれから、静岡県に住む旧友のN君の携帯に電話をかけた。彼が勤める果樹研究所の一般公開イベントが明日の日曜日に予定されていて、高校時代の同級生4人で出かけることにしていた。柑橘類が専門の研究所で、世にも珍しい種類のものを幾つも見学できるそうだ。

 N君はその前は広島県にある研究所に長くいて、ブドウやカキの栽培に携わってきた。そんな風だったから、私は高校を卒業後、N君とは殆ど会っていない。だから明日の機会を楽しみにしていたのだが、東京では今夜もずっと雨が降り続き、明日の午前中まで強風が続くとなると、新幹線を含めた交通機関にも今日以上に影響が出るのではないか。そう考えると、非常に残念だが明日の静岡行きは見送りにした方がよさそうだ。彼に電話をかけたのは、そのことを伝えるためだった。

 電話の向こうからは、学生時代と少しも変わらないN君の快活な声が返ってきた。
 「東京は雪すごいみたいだね。明日は電車動かないかもしれないよ。無理することないんじゃない?」

 彼が清々しくそう言ってくれて、私は救われた気分になった。この果樹研究所の一般公開イベントは年に一回だけだから、また来年のこの時期を待たねばならないが、次回こそは是非とも実現させたいものだ。その時の再会を期して、N君との短い会話を終えた。

 午後3時半を過ぎた。窓の外は、予報通り風が出てきたようだ。粉雪が真横に流れて行く。暗くなる前に、もう一度外の様子を見て来ようか。

 家から最寄りの地下鉄の駅へ向かう。その駅は半地下構造になっていて、ホームの東側は地上に出ている。その先には車両工場を兼ね備えた基地があり、その様子を橋の上から眺められる場所がある。だいぶ雪が降り積もったためか、この日は保線の職員が線路に出ていた。
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 駅前に出て大通りを渡ると、昔の東京教育大学の跡地が公園になった場所がある。「教育の森」と名付けられたその公園は緑豊かで、私は散歩に行くことがよくあるのだが、この雪ではさすがにひっそりとしている。いつものベンチもすっかり雪が積もり、山手線の内側の景色とはちょっと思えないほどだ。
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 そして、そこから更に奥へ入っていって坂を下ると、占春園という庭園がある。細長い池があるのだが、夏ともなると鬱蒼とした緑に覆われて昼間も薄暗い。その池は、降りしきる雪の中で冬の姿を見せていた。
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 立春を過ぎて、今は午後5時を過ぎてもまだ明るい。結局、午前中の行動に加えて、午後も雪の中を二時間近くも歩き回ることになった。だが、その間に風はどんどん強くなり、最後はビニール傘が壊れかけるほどだった。

 この日の24時間の気象データを確認してみると、やはり午後から次第に風が強まり、日没の頃から積雪量が多くなっていったことがわかる。結局、東京都心の積雪量は27センチに達し、1969(昭和44)年3月12日に30センチを記録して以降、この45年間で最大になった、
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 一夜が明けて、9日の日曜日は午前中に青空を取り戻し、太陽が輝いて案外と気温も上がったので、街中の雪は急速に姿を消していった。それでも交通機関は乱れ、特に高速道路は各地で閉鎖が続いている。予定していた静岡行きを断念した私は、都内の実家へ行き、玄関前の雪かきで半日を過ごす。そうしたことに時間を取られた人が多かったのか、都知事選挙も投票率は低調だったようだ。

 某鉄道会社の広告のキャッチコピーが、どこからか聞こえてきそうだ。
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