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低山の春 - 南高尾山稜 [山歩き]

 山の春は麓からやってくる。

 里山の麓を覆う多様な草木が少しずつ、しかし着実に新たな緑を甦らせていくのがこれからの季節だ。毎日同じ場所で定点観測をしてみれば、きっと驚くほどの速さで周囲の景色に緑が増えていくのがわかることだろう。春の初めというと、若い頃は高い山に残る雪を求めて遠くまで出かけたものだが、この歳になると、里山に甦り始めた赤ん坊のような緑が限りなくいとおしい。

 日曜日の朝8時過ぎ。三方向から電車に乗って、相模原市の橋本駅北口に8人の山仲間が集まった。大震災があって以来、心ならずも遠出がしにくかったのだが、街にも桜が咲いて春が来た。日本中が縮こまっていては何もならないから、私たちは再び山を歩きに出よう。そう思って今回は、尾根道から麓の桜を眺め、旬の緑を楽しめる低山コースを選んでみた。それが、津久井湖から大垂水峠を経て高尾山に至る南高尾山稜と呼ばれる山々である。前回の山行から1ヶ月と4日。再会したメンバーは、やはり誰もが笑顔だ。
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 橋本駅から一日に何本もないバスに揺られること20分。終点の上中沢で降りたのは、私たちの他に実年夫婦が二組。いずれも山歩きの装束だ。あたりは畑と僅かばかりの民家、そして津久井湖とそれを取り囲む里山の眺めである。バスの走ってきた道路から別れ、道標に従って「首都圏自然歩道」を緩やかに登ってくと、30分ほどで峰の薬師という古刹に到着。境内から見下ろす津久井湖畔の桜がきれいだ。
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 ここから先は山道が始まり、展望のきかない樹林の中を歩く。登りらしい登りは電波塔の立つ所までで、城山湖へ下る道を右に分けると、その先は道の左側がヒノキの植林、右側が落葉樹の雑木林という、とりとめのない、それでいてどこか親しみのある穏やかな山道が続く。三沢峠に出ると、そこから中沢山(494m)までは、幾つかの小さなピークをまき道でやり過ごす。まき道を通らずに稜線を忠実にたどったとしても、標高差が100mにも満たない平坦なコースである。
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 峰の薬師からちょうど1時間で、左側に一箇所だけ津久井湖の眺めが広がるビューポイントに出た。晴れていれば丹沢や富士山も見えるそうだ。今日は遠景は雲の中だが、雨が降るような天気ではない。霞のかかったような眺めも、春らしくていいものだ。
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 ビューポイントから更に10分ほど登ると、観音様の像が立つ中沢山のピークに到着。森の中で展望はない。峰の薬師からここまでは、かなりの年配者も含めた10人ほどの実に賑やかなパーティーと、抜きつ抜かれつの展開だったが、彼らは中沢山のピークを通らず、まき道で先へ進んでいった。あの元気はたいしたものだ。大震災から一ヶ月。彼らもまた活動再開組なのだろうか。

 中沢山から更に20分。ちょうど11時になろうとする頃、次のピークのコンピラ山(515m)に着いた。この一つ先の大洞山(536m)のベンチで昼食にする計画にしていたが、予定よりもだいぶ早く着いているし、コンピラ山頂に用意されたベンチがなかなかいいので、休憩はここに決めた。私たちの他には誰もいない。

 ベンチの脇に用意された「ザック掛け」が、なかなかいいアイディアだ。どこか居酒屋のカウンターのようなベンチを8人で囲みながら湯を沸かし、持ち寄った果物やお菓子なども分け合いながら、30分ほどの昼食を楽しんだ。
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 親しい仲間と共に山にいることの幸せ。皆の笑顔が弾む。雲間から時々日が射すようにもなってきた。山道を覆う色々な低木には、それぞれのスタイルで新しい緑が頭を見せている。震災の発生以来、足が遠のいてしまっていたが、山は少しも変わることなくいつもの春を迎えようとしている。そのことが、どれほど今の私たちを元気づけてくれることだろう。木の間越しに見えている高尾山の稜線が穏やかだ。
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 道はまだ半ばだ。コンピラ山から、私たちは再び出発する。この先は大洞山まで多少の登りがある以外は、大垂水峠まで緩やかな下りが続く。高尾山方面から私たちと逆コースでやって来た登山客とも頻繁にすれ違うようになった。そして、高尾山の名物であるスミレの花が、大垂水峠に近付くにつれて増えていく。国道20号線が眼下に見えるようになり、車が次々に走り抜ける大垂水峠を陸橋で越えると、そこからは高尾山への登りだ。
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 「学習の道」と名付けられた、等高線に沿ったような道を進み、谷を幾つも回り込むと、小仏城山から桜で有名な一丁平を経て高尾山へ続く山道と鞍部で合流する。このあたりからは行き交う登山客が一気に増えてきた。本日最後の登りらしい登り、モミジ台の階段を上がると、右手に今日歩いてきた南高尾山稜が穏やかな山並みを見せている。地味な山域だが登山道は歩きやすく、親しみの持てるコースだった。来てみてよかった。
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 13時15分、結局は当初の計画通りの時間に高尾山頂に到着。ここまで来ると、もはやどこかのターミナル駅と変わらないような賑わいだ。老若男女あらゆる種類の人々が集っていて、さすがは高尾山である。こうなっては長居は無用。数ある登山道の中から、一番南側を回る稲荷山コースを私たちは早々に降り始めた。終始トップを歩いてくれたH氏がここでもいいペースでリード。コースタイム1時間半の道を55分で駆け下りて、ケーブルカーの清滝駅の前に着いた。

 O女史の万歩計によると、今日の歩数は3万歩を超えているから、15~16キロは歩いたことになる。一ヶ月のブランクがあったが、皆よく歩いてくれた。お疲れさま。コンビニでビールを買い求めて、ともかくも乾杯!

 山の中が木々の芽吹きなら、麓は満開の桜だ。高尾山口から乗った電車の車窓からは、東京の郊外の桜がどこまでも続いていた。あと二週間ほどで、山桜も見頃になることだろう。また機会を見つけて、仲間たちと出かけてみたいものである。

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コメント 2

H氏(北京原人)

お疲れ様でした。
よく歩きましたね。
久しぶりの究極の低山(笑)。
でもそれはそれでいろいろな発見もあり、やはり楽しいですね。
いつも幹事役、ありがとうございます。
おかげ様で何も考えずに登れます。
またよろしくお願いします。
by H氏(北京原人) (2011-04-13 22:35) 

RK

今回もご参加ありがとうございました。
冬から春にかけてはなかなかいい山域ですね。
これからは新緑が楽しみな季節。
また出かけましょう。
by RK (2011-04-14 06:10) 

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