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緑の下で [季節]

 日曜日の朝、東京では「五月晴れ」を先取りするような爽やかな青空が広がった。

 朝食を終え、週に一度の食糧品の買出しに家内と出かけ、家に戻ってきてもまだ10時前だ。今日は少し机に向かわねばならないこともあるにはあったのだが、何もこんなに天気のよい日中にすることもない。それでなくても、休日に室内でじっとしているのは苦手な方だ。早速ジョギング用の衣類に着替え、クルマを出して北の丸公園へと向かうことにする。

 飯田橋から外堀に沿って走ると、左側の街路樹は葉桜だ。新見附を左に曲がって一口坂、靖国神社の前で右折して半蔵門へ。通り過ぎていく街は、今までの人生で何かと縁のあった地域だ。都心の中でも緑が多く、これからが一年の中でも一番素敵な季節である。

 北の丸公園の公共駐車場に車を停める。走ってきた道路を歩道橋で越えた所からいつもジョギングを始めるのだが、そのスタート地点が今日は桜の花に彩られている。好天とあって、皇居一周コースは早くもランナー達が次々にやってくる。軽く屈伸運動をした後、私も走り出した。
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(歩道橋を渡った所がいつものスタート地点)

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 皇居の内堀を反時計回りに一周するコース。北の丸からスタートすると、最初は最も緑が深くて静かな桜並木の道だ。道路の反対側の土手を上がると、千鳥ヶ淵を見下ろすことができる。桜が満開だった先週末あたりは、多くの人々が訪れたことだろう。千鳥ヶ淵の交差点を左に曲がるあたりから、お堀に向かう斜面には菜の花が咲き乱れるようになる。行く手は半蔵門である。
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 このあたりは、私が今走っているお堀沿いも、そして広い道路の反対側にある英国大使館に沿った歩道も、桜の季節は実にいい所だ。その桜の名残を楽しみながら半蔵門へやって来ると、スケッチブックを広げた年配の人々が絵筆を取っている。南向きで明るく広い景色は絵心を呼ぶことだろう。街路樹のプラタナスに甦った若葉の緑色が青空によく映えている。
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(半蔵門からの眺め)

 半蔵門から桜田門まではゆっくりとした下り坂。風も爽やかで実に気分の良い所だ。ジョギングのスピードが上がる区間でもあるのだが、こんなに青空がきれいで花と緑に囲まれた日なのだ。ただ走り過ぎてしまうだけではもったいない。だから、今日はデジカメを片手に走りながら、眺めのいい所ではしばし立ち止まってシャッターを切る。走行タイムを競っている訳でもないから、今日は景色を楽しむことを第一にしよう。

 下り坂に身を任せていると三宅坂に出る。このあたりの眺めも春爛漫だ。振り向けば、半蔵門からやってきたコースが太陽に照らされて底抜けに明るい。皇居一周コースはもちろんランナー専用ではないから、一般の歩行者の迷惑にならないよう、マナーに気をつけるのは当然のことだが、道路を渡る箇所がないので、交通信号によってペースが乱されることがない。それに加えてこの花と緑だ。都内でも最も恵まれたジョギング・コースの一つだろう。
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(三宅坂から半蔵門方面を振り返る)

 桜田門に近づくと道は平坦になる。以前はこの門をくぐって皇居前広場へと出られたのだが、例の震災で東京にも強い揺れがあったためか、今は通り抜けが出来なくなっている。ランナーたちは祝田橋を左に曲がって皇居前へと進む。街路樹はプラタナスに代わってヤナギである。
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(桜田門へ)

 ここからしばらくは真っ平らな景色だ。風の弱い日に走っていると、ここを通過する時が一番暑く、汗が出る所だ。丸の内のオフィス街を遠目に見ながら汗を拭き拭き走る。和田倉門の交差点の向こうに東京駅が見えてくると、暑さを感じる箇所も間もなく終わりだ。噴水公園にもだいぶ緑が甦っていた。
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(東京駅方面)

 大手門を過ぎ、お堀沿いのヤナギの緑を楽しみながら尚も進むと、気象庁前の信号の左手に和気清麻呂の像が立っている。ちょっとした公園になっていて、ランナー達が休息を取っている。大手町方面から走り始める人々にとっては、ここが起点かつ終点になるのだろう。清麻呂と桜。いずれも日本人の「赤き心」の代名詞と言えようか。
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(和気清麻呂像)

 ここから平川橋を経て竹橋までも桜が多い。そして竹橋から北の丸公園までは登り坂だ。私はその北の丸を起点にしているから、皇居一周コースの最後がこの登りになる。辛抱のしどころである。しかし、再び緑の深い場所へと戻るので、気分は良い。スタート前に渡った歩道橋が見えて来る。北の丸公園の入り口は枝垂桜がきれいだ。そうこうしていると、5kmのコースは一回りすることになる。
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(平川橋を望む)

 一周目は撮影ポイントで立ち止まりながら走ったが、ここからは普段通り走ることにしよう。スイッチを切り替えて、今日はそれから更に二周を走った。正午になって太陽は高く上ったが、吹く風が心地よく、快適なジョギング日和であった。
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(国立近代美術館工芸館)

 車に戻り、午後の早い時刻に自宅へと向かう。ひとまず熱いシャワーを浴びるとして、整理体操がてら、それからもまだ近くを散歩に出てみようか。

 緑を眺めることが優先で、机に向かう用事は結局後回しになる、いつものような日曜日だった。

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