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雪化粧 [季節]


 午前4時に仕掛けておいた携帯電話のアラームで、目が覚めた。今朝はこの後、家内をクルマで池袋駅まで送り届けないといけない。

 成人の日の今日は、着物の着付けが朝早くからラッシュになる。この二年ほど着付けを学んできた家内は、今日のような時に着付けの補助を行うような立場になって、今朝は5時の始発電車で会場に駆けつける必要があった。

 支度が整ってマンションの駐車場に出ると、外は雨が音をたてていた。それほどの寒さもないから、今日はこのまま雨が続くのだろうか。祝日の早朝、それも日の出の2時間以上も前だから道路は閑散としている。沿道で灯りがついているのはコンビニぐらいのものだ。雨粒に滲むそんな光をワイパーが次々に拭き取っていく。
 「成人の日にこの雨はお気の毒ねえ。」
家内がそう呟いた。

 家内を駅まで送り届けて家に戻って来ても、まだ5時を過ぎたばかりだ。私は横になって、読みかけの本を読み始めたが、いつしか眠りに落ちてしまい、次に目が覚めたのは8時を過ぎていた。窓の外は、降り方が少し弱くなったようだが、まだ雨だった。ひとしきり新聞を読み、それから簡単な朝食の用意をして、娘と食卓を囲む。その時にはもう、雨の代わりに風に舞う白いものがちらちらと見えるようになっていた。寒気が入り始めて気温はどんどん下降していたのだった。
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 食後のお茶でくつろぎ、私は読書の続きだ。今日はこんな天気だから、晴耕雨読の後ろ二文字を決め込むとするか。

 それから二時間ほどが経っただろうか。もう一度窓の外を見ると、雪の降り方がすごい。それも、強風で横殴りの雪だ。道路脇の植え込みはもう真っ白で、木々の枝にも雪が積もっている。今日は交通量が少ないので、車道もだんだんと白くなり始めた。これは案外大雪になりそうな気配だ。

 東京でも一冬に何度か雪の日があるが、休日の昼間が大雪というシチュエーションは久しぶりのような気がする。それならば、家の中でじっとしているなんて勿体ない。私はすぐに防寒着に身を固め、正午からスノー・ハイクのつもりで外を歩き回ることにした。

 徳川将軍家の菩提寺の一つ、小石川の伝通院。普段から静かな境内がすっかり雪化粧をして、何やら時代劇を見ているようだ。
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(小石川伝通院)

 伝通院から安藤坂をそろりそろりと下る。幕末期の老中・安藤信正で知られる安藤家(飛騨守)の上屋敷があったことが地名の由来となったこの坂道は、案外と急である。坂を下りて左の路地に入ると、源頼朝ゆかりの牛天神北野神社。このあたりは人の往来が少なく、踏み跡のない雪の上を歩き続けることになる。
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(牛天神北野神社)

 牛天神から更に商店街を抜けて大通りを渡ると、道はJR飯田橋駅へと続く。休日は午後からホコ天になる神楽坂通りは、クルマが通らない分だけこんな日は雪が積もりやすい。これも案外と傾斜のある坂道なので、人々は足元を気にしながら歩いていた。
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(神楽坂)

 神楽坂下の交差点に立つと、東京にしては久々の大雪が始まっていることが実感出来る。すぐそばのJR飯田橋駅の前から線路を見下ろすと、走って来るE231系の通勤電車もすっかり雪化粧で、いったいどこの鉄道路線か?といった風情である。
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 飯田橋から地下鉄で二駅。降り立った護国寺も雪の中だ。音羽通りと不忍通りのT字路では交通渋滞が始まっている。大塚三丁目へと上がっていく不忍通りの坂道が、もはやノーマルタイヤでは上がれない状況になっていたのだ。その騒ぎを尻目に護国寺の境内に入ると、これまた江戸時代に戻ったような雪景色。石段に積もった雪は10センチ近くあっただろうか。
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(護国寺)

 それにしても大雪になった。街中の見物はこれぐらいにして、実家の母の様子を見て来よう。そこから電車を乗り継いで、私は都内の実家へと向かった。地下鉄とは異なり、地上を走る私鉄には電車の遅れがだいぶ出ていて、普段よりも時間がかかったが、ともかくも午後4時前には実家に到着。ザックに入れておいたゴアテックスの登山用雨具を着て、家の前の雪かきに取り組んだ。

 今は独り暮らしをしている年老いた母。こういう時の雪かきは近所の方々のお世話になっているようだ。平日だと私は手伝いに行けないが、幸い今日は休日である。ちょうど私が作業を始めた直後から、お向かいやお隣から人が出て来たので、四軒ほどで共同での作業となった。こんな時はお互いさま。ご近所とそんな関係でいられるのはありがたいことである。

 晴耕雨読のつもりが、正午からは案外と体を動かすことになった雪の一日。結果的には、寒気が入って東京の気温が一番低かった時間帯に、私は外に出ていたことになるが、スノー・ハイクと雪かきの軽い疲労感が心地よい。午後6時過ぎに自宅に戻ると、着付けの補助の仕事を終えて一足先に帰宅していた家内が、夕食を並べ始めているところだった。

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唐沢耕

初めまして、唐沢と申します。
実は傳通院の雪景色の写真を探しておりまして、こちらのブログに辿りつきました。とてもきれいな写真ですので、よろしかったら画像をお借りしたいのですが可能でしょうか。
kokopy@me.com までご連絡をいただけますと助かります。
何とぞよろしくお願い申し上げます。
by 唐沢耕 (2013-03-29 00:49) 

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