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穏やかな大寒 - 高松山・シダンゴ山 [山歩き]

 新宿を朝7時に出た小田急ロマンスカーが相模川の鉄橋を渡ると、右手に丹沢の山並みが次第に近づいてくる。今週の初め、1月14日の成人の日は首都圏でも大雪になったから、車窓の彼方に連なる大山や二ノ塔、三ノ塔などの姿も、ずいぶんと白くなった。

 1月20日、日曜日。よく晴れて青空がきれいだ。こんな日に、座席が3割も埋まっていないロマンスカーにゆったりと座りながら山に向かうのは、ちょっとリッチな気分である。新松田までは一時間あまりの乗車だが、たまにはこんな行き方もいい。

 08時04分、新松田に定刻通りに到着。いつもの中学・高校の同級生6人に5年先輩のMさん、そしてこの駅で待っていてくれたS嬢を加えた総勢8名が集合。さっそく駅前からタクシー2台に分乗して尺里(ひさり)峠へと向かう。30分弱、ちょうど4,000円ぐらいの距離である。

 タクシーの運転手さんの話では、東京が大雪に見舞われたあの日も、このあたりでは雨だったという。実のところ私たちは、もし雪が残っていたら今日のタクシーが峠まで上がるかどうか気がかりだったのだが、拍子抜けするぐらいに周囲は乾いた景色である。杉の植林が続き、葉がもう赤褐色になった木が幾つもあった。花粉症持ちの人々にはつらい季節が、遠からずやって来そうである。

 舗装された急傾斜の農道をぐんぐんと上がり、タクシーは尺里峠の登山道入口に到着。今日はここから高松山(801m)に登り、更にその先の稜線を”C”の字型に辿ってシダンゴ山(758m)を目指す計画だ。「丹沢の南西の果て」と言えばいいだろうか。歩くなら、やはり冬が一番良さそうな山域である。
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08:45 尺里峠 → 09:28 高松山

 今日は暦の上では大寒。前日の土曜の朝が厳しい冷え込みになったから、今朝は寒さ対策には念を入れてきたのだが、歩き出してみると意外に暖かい。植林の中の道を登りながら、つづら折れの途中で振り返ると、青空をバックに箱根の山々が彼方に並んでいた。
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(尺里峠を出発)
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(箱根の山々を望む)

 歩き出してから約20分、標高にして700mを超えたあたりからだろうか、山道に雪が残るようになった。ここから先は雪を踏んで歩き続けることになるのだろう。ほどほどの傾斜が続いていた山道が少しばかり急になり、そこを登ると、向かって左手の森が大きく伐採された箇所が前方に見えてくる。高松山の山頂はそのすぐ先だ。
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 それから一登りでいきなり視界がドンと開けた。6年前の秋に一人でここへ来た時は、高松山の山頂というと、360度ぐるりと植林に取り囲まれていて、わずかに富士山が見える方角だけ木々の枝が払われていたのだが、今や南面がすっかり伐採されていて、相模湾から箱根、そして富士山に至る大展望が思いのままだ。用意されていたベンチに荷物を置き、雪に覆われた高松山の広い山頂で、私たちはしばらくの間、この景色を楽しんだ。
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(高松山頂上)
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(相模湾の方向)
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08:45 高松山 → 西ヶ尾 → 10:35 送電鉄塔

 ここから先、シダンゴ山までのルートは、昭文社の登山地図には点線で表記されている。月曜日の大雪の後、この土日が最初の週末。もしからしたら雪の上は誰も歩いていないかもしれない。先頭を歩くT君はそのあたりを弁えていて、ルート・ファインディングは慎重だ。

 高松山を南西方向に下る山道を分け、一段と深くなった雪の上を少し下る。シカ除けのフェンス沿いに回り込むようにして尾根道は北に向きを変え、ヒネゴ沢乗越まで下ると、今度は西ヶ尾(805m)というピークまで上って、また下る。道は北向きだから日が当たらず、雪が深い。高松山の山頂で全員が靴底に取り付けた滑り止めのスパイクが締まった雪によく利く、その感触を楽しみながら歩き続けて、10時35分に送電鉄塔の下に到着した。
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(西ヶ尾を通過)
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(北斜面の下り)

 鉄塔を見上げながら、5分休憩。少し空腹感を覚え始めたが、シダンゴ山での昼食まで、あと2時間ほど歩かねばならない。
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10:40 送電鉄塔 → 12:35 シダンゴ山

 送電鉄塔から軽く下ると、次の801mピークへの急登が待っていた。尾根筋を○○正直に直登するような道で、今日の頑張り所の一つだ。それを乗り切ると、しばらくは緩やかな尾根歩きだ。アルファベットの”C”の字状のルートを時計回りに歩いてきて、今は10時ぐらいの方角までやって来たことになる。このあたりから主にルートの北側に落葉樹が混じるようになり、木々の枝越しに丹沢の檜岳(1167m)の大きな姿が見えてくる。そして、振り返れば西の彼方に大きな富士。足元にはよく締まった雪。冬の低山歩きは、こんなところが魅力である。
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(801mピークへの急登)
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(快適なスノー・ハイク)
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(振り向けば・・・)

 秦野峠に下る山道を左に分け、その次の緩やかなピークを越えると山道は一旦南に向きをかえて下り、再び上りになる。階段上の結構な急登だ。ガマンしてそれを登りつめたところが、ダルマ沢の頭(880m)。今日のコースの最高地点なのだが、深い森の中で展望はない。
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(ダルマ沢の頭への急登)
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(ひっそりとした本日最高地点)

 そこからは緩い下り。途中の森の中に立つ「シダンゴ山へ0.8km」という道標に励まされる。下りの傾斜が段々と増して、急斜面に架けられた金属製の長い梯子を下ると、林道に出た。ここまで来ると、谷越えに丹沢の鍋割山や塔ノ岳、その先の丹沢表尾根が見えるようになる。
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(長い梯子を下りると林道に)
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(林道から望む鍋割山と塔ノ岳)

 シダンゴ山まではもういくらの距離でもないのだが、ここで5分だけ休憩。林道に停めてあった軽トラックに、鉄砲を持った人が戻ってきた。シカ撃ちをしているのだそうだ。

 再び森の中の山道に入る。案外しっかりとした登りだ。程なく宮地山への山道を右に分け、いよいよ今日最後の登り。空がすこしずつ明るくなり、アセビの群生が現われると、その先がシダンゴ山の頂上である。

 12時35分、シダンゴ山に到着。どんぴしゃり計画通りの時刻だった。さあ、昼飯にしよう。
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(シダンゴ山頂上)

 歩いてきた方角を振り返ると、手前の山の後ろに左肩だけをちらっと見せたような富士山。だが正午を過ぎてその輪郭はだいぶ薄くなっている。それに対して、このシダンゴ山からの眺めの主役は、何といっても丹沢の核心部である。鍋割山の左にちょうどいい角度に深い谷が広がっているので、その谷の奥にある不動ノ峰から蛭ヶ岳までの、丹沢で一番標高が高い尾根が雪を抱いていて実に立派だ。風がなくて日当たりの良い山頂で、私たちは50分間の大休止を存分に楽しんだ。
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(蛭ヶ岳から不動ノ峰への稜線)
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(丹沢表尾根)

13:25 シダンゴ山 → 14:20 寄(やどりぎ)バス停

 山を下る。シダンゴ山から寄バス停までの山道は、国土地理院の地図には表記がないが、明確な登山道だ。山頂から東向きの尾根沿いにつづら折れにどんどん下っていって、やがて右に大きく尾根を外れ、南方向にトラバース気味に高度を下げていく。つづら折れの途中で積雪もなくなったので、一箇所だけ湧き水のある所で私たちは靴底の滑り止めを外した。

 送電線をくぐると里も近く、シカ除けの防護柵の扉を開けると、その先はもう舗装された道だ。案外急な下りなので膝が疲れるが、茶畑やミカンの木が点在する穏やかな里の風景を楽しみながら下っていくと、民家が現われ、 中津川に架かる橋を渡れば寄バス停だ。
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 それから20分後に出た路線バスに30分ほど揺られて新松田駅へ。すぐにやって来た小田急の電車で鶴巻温泉に向かい、熱い湯で汗を流す。そして再び電車に乗って、17時49分に新宿に到着。(これは計画より一本早い電車だ。) 今日のメンバーとはこれが新年初回の山行になったので、いつもの居酒屋での「新年会」を開くことになり、夜遅くまで賑やかに過ごした。

 実のところ、私は土曜日の夜から喉が少し痛くなり、日曜日の未明には背中がゾクゾクとし始めたので、ちょっとヤバいかなと思ったのだが、気を張って雪の山を歩き、下山後には湯に浸かり、そして仲間たちと夜も賑やかに過ごして帰って来たら、引きかけていた風邪はどこかへ行ってしまったようだ。それはまた、暦の上での大寒にしては穏やかな天候に恵まれたおかげでもあったのだろう。

 今年もまた、山仲間たちと元気に出かけて行きたいものだ。

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