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冬と春の境 - 丹沢・鍋割山 [山歩き]

 2月11日(月)、建国記念の日。八百万の神々の寿ぎもあってか、南関東は朝から雲一つない快晴で、小田急線の車窓には雪を抱いた丹沢の山々が並んでいる。よく晴れた分だけ、朝の冷え込みは厳しい。

 07:54に渋沢駅で下車。新宿から一緒だった我々5人の山仲間が階段を登って改札を出ると、もう一人の山仲間のH氏がそこで待っていてくれた。彼は普段から丹沢の鍋割山をホーム・グラウンドにしていて、一昨日も我々が今回歩くコースの一部を下見までしてくれていたほどである。

 「おはようございまーす!」
 「やあ、どうもお久しぶり。」
 「今日は宜しくお願いいたします!」
 「いやいや、こちらこそ。」
何だか、NHKのBSプレミアムでやっている『にっぽん百名山』のオープニングみたいだ。

 駅前でタクシーに分乗し、10分少々で「県民の森」のゲート前に到着。08:15にはそこから林道を歩き始め、四十八瀬川に架かる橋を渡り、大倉尾根への登山道を分ける二股を過ぎて勘七沢を渡る。08:40に小丸尾根の登山道入口に到着。ここまでは林道歩きだったが、いよいよ山道が始まる。今日は小丸尾根を上がって鍋割山稜で雪を踏み、鍋割山(1273m)から南へ、寄(やどりぎ)バス停までの長い道のりを歩く予定である。
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08:43 小丸尾根登山道入口 → 09:34 「小丸まで1000m」の道標
 歩き始めた小丸尾根の登山道は、よく踏まれた歩きやすい道だ。冬枯れの今は見通しもよく、右手の大倉尾根や左手の鍋割山稜がよく見えている。鍋割山のピークはずいぶんと高い位置にあって、今日は相応の高度差を稼がねばならないことを実感する。
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 08:56に「小丸まで2000m」の道標に到着。ここまでは植林の中だが、更に登っていくと落葉樹の雑木林になり、幾分傾斜が緩くなる。09:14に「小丸まで1500m」の道標を通過。再びしっかりとした登りが始まり、斜面の途中にある「小丸まで1000m」の道標には09:34に着いた。まずは順調だが、高度を稼いできたので、さすがに立ち止まると寒くなってきた。

09:34 「小丸まで1000m」の標識 → 10:49 小丸尾根分岐
 このあたりから鍋割山稜の上部が意外と近くに見えるようになるので、ここまでのペースなら残りは楽勝か、などと考えてしまうのだが、まだまだ登りは続く。おまけに、今まで500m間隔で設けられていた道標も、「小丸まで500m」というのはないので、余計に登りが長く感じる。それでも、我慢して登り続ければいいことはあるもので、木々の背が低くなる分だけ見晴しが利くようになってきた。朝は快晴だった空には特に東側から雲が湧き、下界の方は霞んでいるが、遠くに相模湾が輝いている。
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(栗ノ木洞の奥に、シダンゴ山・高松山など丹沢南西部の低山。遠くは箱根。)

 見晴しが利き始めると同時に、山道には少しずつ残雪が現れるようになった。やがてそれが確実に地面を覆うようになると、小丸尾根も終わりに近い。ちょっとした草原状の地形に出て、東側に大山や三ノ塔が見えるようになると、その先が小丸尾根分岐である。ここから先は鍋割山までスノー・ハイクになるはずだから、一休みして靴底に滑り止めを付けて行こう。
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(小丸尾根最上部)
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(雪がしっかり残る小丸尾根分岐)

 鍋割山稜に合流したので、木々の間から北側の展望が得られるようになった。丹沢の最高峰・蛭ヶ岳(1673m)が雪を抱いていて綺麗だ。
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10:53 小丸尾根分岐 → 11:28 鍋割山
 さあ、ここからが今日のハイライトである。貴重なブナ林が残る鍋割山稜はいつ歩いても気分がいいものだが、雪を踏んで歩くこの季節は特に素晴らしい。私はそのブナ林の向こうに見える蛭ヶ岳や檜洞丸の眺めを楽しみながら歩く。山のガイドのように先頭を歩くH氏も、ここが好きで何度も鍋割山を訪れているようだ。
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 雪を踏む感触を楽しみながら、樹林の中のピーク、小丸(1341m)を通過。本日の最高地点だ。その先でちょっとした鞍部に向かって下り始める所に木製の階段があって、西側の展望が一気に開ける。鍋割山の向こうの遥かな富士は雲に霞んでいるが、なるほど、いい眺めだ。H氏が虜になるのも、むべなるかな。
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 鞍部から緩やかに登って一つのピークを越えると、鍋割山荘に向かって山道が左に曲がっていく手前で、北側の展望が大きく広がる。丹沢山から不動ノ峰、棚沢ノ頭などを経て蛭ヶ岳に至る丹沢核心部の眺めに、思わず見とれてしまう。昨年の秋に初めてあの稜線を檜洞丸まで歩いただけに、私には普段にも増して親近感がある。そういえば、あの時もH氏と一緒だった。
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(中央奥が蛭ヶ岳)

 緩やかな尾根の左側を回り込むようにして、鍋割山に到着。山荘の前は登山者で賑わっている。私たちは日当たりの良いベンチに場所を確保して湯を沸かし、昼食を楽しむことにした。

 風は冷たいが、立春を過ぎた日の光には逞しさを感じる。先ほどまでは頭を雲の中に隠していた富士の高嶺も、私たちが昼食を終える頃には姿を現わし、定番ともいえる「鍋割山からの富士」を楽しむことが出来た。
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12:12 鍋割山 → 13:02 後沢乗越
 山頂での記念撮影などで少しゆっくりした後、私たちは下山を開始。南向きでまともに日の当たる尾根は、すぐに雪がなくなって泥田のようになった。それまで装着していた滑り止めも、ある程度傾斜が緩くなってからは靴から外し、泥んこの道をひたすら下る。富士の眺めともいつしかお別れになって、後沢乗越に到着。マイカーで県民の森まで来た人は、ここから左へ谷を下ればいいのだが、私たちはなおも南へと向かう。
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13:07 後沢乗越 → 14;15 林道出合
 鍋割山からここまでは下りの連続だったが、この先は栗ノ木洞という908mのピークまで標高差100mほどを登り返さなければならない。ここまで下ってこの登り返しはこたえるが、まあ我慢して登ろう。13:30にその栗ノ木洞に着いて小休止。そこでH氏からトップを私が引き継ぐ。樹林の中の道を下り続け、13:47に草原状のくぬぎ山(810m)に到着。そこから相模湾も眺められるのどかな場所で、時間があればゆっくりしたい所だが、私たちはそのまま通過。この時点では、寄バス停発14:40の路線バスに乗れる可能性をまだ残していたからだった。

 だが、ここから先が予想外に長い。行けども行けども樹林の中の下り道が続く。階段を下りて林道出合にやっと着いたのが14:15。山地図を見ると、ここから寄バス停までは40分かかるというから、もはや予定のバスは無理だ。その次のバスは一時間後だから、ここから先はゆっくり行こう。それにしても、栗ノ木洞から林道出合まで下り30分という山地図上のコースタイムにはちょっと無理があるように思う。
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14:20 林道出合 → 15:15 寄バス停
 この先は再び山道に入るが、それは短い間のことで、シカ除け(或いはイノシシ除け?)の柵を二ヶ所で越えると舗装林道が始まる。その先は茶畑だ。土佐原集落を過ぎて宇津茂集落へと下りていく途中では、沿道に蝋梅が咲いている。ささやかながらも地元の自治体による「ロウバイまつり」も行われていて、遠方から訪れた人もそれなりにいたようである。
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 「ロウバイまつり」の会場で買い求めた缶ビールで喉を潤しながら、私たちは寄バス停へ。下りの長かった今日の行程も、これでゴールインである。

 鍋割山の「地元民」、H氏にお付き合いいただいた今日の山行。おかげさまで、雪を踏み、富士を眺め、麓では春の兆しをも楽しむことが出来た。名ガイドに改めて御礼を申し上げたい。

 春の訪れは待ち遠しいが、その一方で、山から雪がなくなってしまう前に冬の後ろ姿もまだまだ楽しんでいたいとも思う。それぐらい、この時期の山は魅力的である。

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コメント 1

H氏

今回は久しぶりに参加させていただきありがとうございました。
お陰さまで普段、行けない丹沢を楽しむことができました。
次回は県民の森から大倉へ出て塔ノ岳、鍋割と周回しましょう。
今回より楽だと思います。
またよろしくお願いします。
by H氏 (2013-02-17 21:53) 

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