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昔歩いた道 - 奥多摩・六ツ石山 [山歩き]


 日曜日の早朝の青梅線下り電車は、「登山電車」といっていいだろう。

 立川発07:05の奥多摩行の四両編成の電車は、立川を出た時点で乗客の大半が登山客。既にかなりの人が立っている。拝島では西武拝島線や八高線からの乗り換え客が乗車。そして青梅で8分ほど停車している間に、東京からやって来た直通の快速が到着。そこから更に大勢の登山客が乗り込んでくるので、07:52に青梅を発車する頃には、平日朝の通勤電車並みの混雑になる。

 08:29に電車が奥多摩駅に着くと、ホームから改札口へと降りる階段通路は長蛇の列だ。そして、駅から吐き出された登山客たちは日原方面と奥多摩湖方面に向かう路線バスを目がけて走る。バス一台で乗り切れる乗客数ではないから、各路線ともバスを増便して対応。それらが次々に発車していくので、小さな駅前広場がちょっと慌ただしいことになる。

 駅前を出発して6~7分。境橋という橋の上のバス停で私たち8人は下車。橋の西端から北方向に延びる細い道の上で、私たちは登山の身支度を済ませる。空はよく晴れ、あたりは新緑がまぶしい。気温もだいぶ上がるようだから、今日は久々に汗をいっぱいかく山歩きになりそうだ。
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08:50 境橋バス停 → (ハンノキ尾根) → 10:10 山の神 下

 幅の狭い舗装道路を進んでいくと、間もなく左に「六ツ石山登山道」の標識があり、それが導くままに細い道を登って行くと、すぐに山道が始まった。そして、西方向へ回り込むようにして谷の中を登っていくと、古い鉄道橋をくぐりながら、上り坂が続いている。草に覆われていかにも廃線鉄道の趣があるこの鉄道橋は、戦後の小河内ダム建設の際、その資材の運搬用に建設された水根貨物線という鉄道の跡なのだそうだ。
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 やがて山道は谷を右回りでトラバースしながら北に向きをかえ、樹林の中を黙々と登って行く。トップを行くM女史がずいぶんと快調なペースで登っていくので、歩き始めから45分ほどで、樹林が伐採されて草の生い茂る斜面に出た。風がなくてカンカン照り。私たちはもう既に汗まみれだ。
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 伐採地を更に登っていくと、こんな山の上にまで!と思うようなところに農家がある。しばらくは農家のフェンスに沿って登るのだが、やがてあたりが一面の枯草で道が明瞭でない所に出た。冬の積雪の頃などはもっと分かりにくいことだろう。ともかくもハンノキ尾根を外さないように上を見ながら登っていくと、ようやく明瞭な山道に戻り、尾根に向かって登りが続く。途中、日蔭で風が通る場所で一休み。再び歩き出して樹林の中を登っていくと、程なく山の神を祀る小さな祠があった。
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10:20 山の神 下 → 11:15 トオノクボ 11:27 → 12:03 六ツ石山

 山の神から更に20分ほど登り続けると、山道の傾斜が少し緩くなり、ヒノキの植林と新緑のまぶしい落葉樹の森とが右と左に分かれた防火帯に沿って登っていくようになる。草地にはワラビが頭を出し、クリのイガがいたる所に落ちている。奥多摩の山でもこのあたりはクマの目撃情報が多いと聞くが、これだけドングリが多ければクマもいるのだろう。
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 それにしても、あたりの木々の新緑は眺めていて気持ちがいい。標高も上がってきたし、尾根筋はそれなりに風も吹くので下界よりは快適だ。順調に歩みを続けて11:00にトオノクボに着いた。奥多摩湖北岸の水根から登ってくる急傾斜の山道と合流する地点である。広々としていて、思わず一休みしたくなる場所である。

 持ち寄ったフルーツなどで一息入れた後、私たちはトオノクボから六ツ石山への最後の登りへと向かう。どういう訳か、今日の登山道には地生えのフキが多かったのだが、トオノクボからの登りにも、これでもかというほどフキが生えている。
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 このあたりの傾斜が少し急なのだが、それを乗り切ると六ツ石山の山頂はもう近い。既にヒノキの植林はなくなっていて、あたりはどこを見ても落葉樹の鮮やかな新緑だ。まだ咲き残るミツバツツジの花に励まされながら登り続け、予定より30分ほど早い正午ちょうどに六ツ石山の山頂に着いた。
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 いつもの日曜日帰りの山歩き。今回は中学・高校の同級生5人に加えて、高校山岳部のOB:・OGから3名にご参加をいただくことになった。最年長のIさんは我々の8年先輩で、山梨県の西部にお住まいなのだが、今日はこの山行のために東京へ出てきて下さった。そのIさんからふるまわれたのが、地元産の赤ワイン。適度に冷やされていて、それを山の緑の中で味わうのは最高の気分である。時間に余裕が出来たことから、六ツ石山の広い山頂で、私たちはのんびりと昼食を楽しんだ。
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 午前中から気温がかなり上がり、雲がムクムクと湧いていたから、遠くの展望は限られていて、すぐ隣の鷹ノ巣山(1737m)の稜線が見えるぐらいだ。その鷹ノ巣山の向こうの方で、遠い雷の音が鈍く空に響いた。
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12:40 六ツ石山 → (石尾根縦走路) → 14:34 三ノ木戸林道出合 → 15:10 三河屋旅館

 40分ほどの昼食休憩を終え、私たちは北に向かって出発。山道はすぐに石尾根縦走路と合流する。ここから先は奥多摩駅まで、傾斜はさほど急ではないが、道のりが結構長い下り道が続くことになる。たまに木の根の張った道をずんずんと降りていくような箇所もあるが、総じて山道は穏やかで、東に向いた尾根沿いにゆっくりと高度を下げていく道だ。

 とりとめもない下りが続くので、特に写真を残す機会もなかったのだが、尾根を南側にそれて林道への分岐に出る所までは順調。だが、羽黒三田神社に出てからの道路歩きが思ったより長く、温泉のある三河屋旅館にたどり着いたのが、計画よりわずかに10分早い15:10だった。六ツ石山の山頂を出る時点までは、計画よりも終始30分早かったことを考えると、それからの下りに思いのほか時間を取られたことになる。
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(山道の最後に本仁田山がよく見える箇所がある)

 三河屋旅館の「麻葉の湯」につかりながら、窓の向こうの愛宕山の新緑を眺めていて、ふと思い出した。私たちが高校一年の秋、それも11月に入っていたはずだが、今日も参加してくれている旧友のT君と二人で、一泊二日の山歩きをしたことがあった。41年も前のことだ。

 それが日曜日だったか祝日だったかは忘れてしまったが、初日の朝は秩父の三峰山を起点にして、そこから尾根続きに雲取山に登り、七ツ石山を経て夕暮れ時に鷹ノ巣山の避難小屋に到着。そこで一夜を明かして、翌月曜日の夜明け前に小屋を出発。ヘッドランプをつけて石尾根縦走路を一路下山。今日の後半部分と同じルートを駆け下って奥多摩駅に着き、朝早い電車で拝島経由・武蔵五日市に出た。その日の朝から秋川渓谷で一泊の学校行事があり、朝は武蔵五日市駅集合になっていたのだった。

 今思えば、あの頃は信じられないような体力があったものだ。普段の日だって、三時間目の授業が終わると早弁をして、四時間目が終わったら60分の昼休みの間はずっとサッカーの試合。そして放課後は山岳部のトレーニングをしていたのだから。

 そのT君も私も、今年で57歳。そして今日ご参加いただいた3人の先輩方は、私たちの4~8年上の方々である。今から5年後・10年後を考えた時、私たちは今日の先輩方と同じぐらいに元気に山を歩けるだろうか。たまたま今週は、三浦雄一郎さんの80歳でのエベレスト登頂が大きなニュースになったが、歳をとっても足腰だけはしっかりしていたいものだと、改めて思う。

 奥多摩駅からの帰りのホリデー快速は、再び通勤電車のような混雑になっていた。

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