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梅雨の晴れ間に - 新宿区・箱根山 [山歩き]

 5月29日(水)に関東地方が梅雨入りをして最初の日曜日。天気予報では「雨のち曇り」、「最高気温は19度までしか上がらず、梅雨寒」などと言っていたのだが、東京の都心は朝の光が案外まぶしかった。家族とゆっくり朝食をとり、コーヒーを飲みながら新聞に目を通していると、窓の外では空がますます広がったようで、正午近くには快晴に近い空になった。気温も「肌寒い」というところまで低くはなく、湿度が低いのでむしろ快適な日和である。

 初めからそう言っていてくれれば他に時間の使い道があったのに・・・と思ってはみたが、この時期の天気は予想が難しいから仕方のないことだろう。それよりも、雨のはずが望外の快晴になったのだから、このまま家の中でじっとしている手はない。せっせと外を歩いて来よう。

 東京メトロ東西線の早稲田駅か、或いは副都心線の西早稲田駅が最寄りになる、都立の戸山公園。我家からだとせっせと歩いても50分近くかかるのだが、山手線の内側にありながら緑の深い公園で、私が好きなスポットの一つである。南北に走る明治通りを挟んで、東側が「箱根山地区」、西側が「大久保地区」と二つに分かれている。私はいつも、早大のメインキャンパスの方から歩いてくるので、箱根山地区の北東側からこの公園を訪れることになる。
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 右手には渓流のある森、左手にはスポーツ用のグラウンド。そこを抜けると、ボランティアの人たちによって維持されているきれいな花壇が続く。今頃は各種のバラの花が見ごろだ。
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 花壇から南に向かうと、その先は鬱蒼とした森になる。木漏れ日に輝く新緑が本当にきれいで、都心にいることを忘れてしまいそうな気分になる場所だ。今日も年配の外国人たちが散歩を楽しんでいる。
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 その森に入ってすぐのところに、茶碗にこんもりとご飯を盛ったような形の築山がある。三方からこの山に上がる階段が整備されていて、上からは子供たちの声が響いている。これが「箱根山」だ。
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 江戸時代に、このあたりは徳川御三家の一つ、尾張徳川家の広大な下屋敷だったという。二代藩主・徳川光友(1625~1700)がここに回遊式の庭園を造営。それが戸山山荘と名付けられ、後世になって11代将軍・家斉が訪れるなど、江戸有数の庭園であったそうである。その中には小田原宿の様子を模した箇所があり、こんもりとした築山は小田原の西方に聳える箱根の山に見立てたという。それが、この「箱根山」である。

 大正時代の東京の地図を見ると、あたり一帯は陸軍の関係の施設になっている。戸山公園・箱根山地区の北西側に隣接する、現在の都立戸山高校や学習院女子のあたりは近衛騎兵隊、そして戸山公園・大久保地区は射撃場だ。その北側にある諏訪神社には、そこから明治天皇が射撃訓練の様子を視察されたという行幸の碑が残っている。
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 この大正時代の地図からは、陸軍関係の施設に囲まれながらも、箱根山の一体がかつて回遊式庭園であった様子が、現在よりも明確に残っていたように見える。

 さて、その箱根山に登ってみよう。階段を上がると、その「山頂」は平らに整地されていて、その標高を示すプレートがちゃんとある。標高44.6m、東京23区の「最高峰」なのだそうだ。四方は森に囲まれているので、そこからの展望といえば、わずかに新宿副都心の高層ビル群が眺められるぐらいである。
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 私は今までにここを何度も訪れているが、今回は見かけない立札が山頂にあることに気がついた。それによると、この公園のサービスセンターへ行くと、自己申告で箱根山の登頂証明書をくれるのだそうだ。(後でネットで調べたら、今年の2月から始めたのだそうだ。) 登頂証明書とは何とも大袈裟だが、せっかく来たのだから、モノは試しで貰ってみようか。

 立札に書いてある戸山公園サービスセンターの住所からスマホで調べてみると、それはこの公園の大久保地区の方にあるという。そこへ行くには明治通りの西側まで歩かねばならない。最短距離でも1km以上あるのだが、どうせ歩きに来ているのだから、行ってみるか。

 それから公園を抜けて明治通りを渡り、早大理工学部の前を通って戸山公園・大久保地区のサービスセンターへ。事務室のドアを開けて用件を切り出した。

 「箱根山の上に書いてあったのですが、登頂証明書というのはこちらでいただけるのですか?」
 「おお、それはそれはご苦労さまでした。遠かったでしょう? ここまで。」
 「まあ、今日はお天気がいいから、歩いていて気持ちが良かったですよ。」
 「そうでしたか。雨だって言ってたのにねぇ。」

 そんなやり取りをしながら、気さくな職員さんはさっそく証明書を用意してくれ、他に各種のパンフレットを一緒にしてクリアフォルダーに入れてくれた。なかなか立派な証明書で、そのどこか大袈裟なところがユーモラスだ。行政サービスとしてはいいアイディアではないだろうか。
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 大久保地区でも、広い緑の中で人々が日曜日の午後を楽しんでいる。時計は午後4時を回る頃だが、一年で最も日の長い今は日没までまだ時間がたっぷりある。これから家に帰ったら、ベランダで緑を眺めながら家内と一杯やろうか。
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 梅雨の晴れ間の3時間ほどの散歩。この記事のカテゴリーは、登頂証明書を貰ったのだから、「山歩き」とした。標高44.6m、「山低きが故に卑しからず」である。

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