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一周10km (2) [自分史]

 この7~8年の間に私の習慣になった、週末の10km走。後半戦は東京メトロ南北線の西ヶ原駅を過ぎたところから始まる。

●西ヶ原駅 → 田端五丁目 → 谷田橋

 私のジョギングの場合、前半の5kmよりも後半のそれの方がタイムが遅い。特に、調子があまり良くないのに走ってきて、前半のラップタイムが散々だった時など、このひどいペースであと半分走るのかと思うと、気が滅入りそうになることがある。けれども、ぐるっと一周のコースだから、この中間地点が家からは一番遠い。走るのをやめて帰宅しようにも、ずいぶんと時間がかかってしまう。そんな訳で、ここまで来てしまった以上は後半も頑張って走らねばならないのである。

 西ヶ原駅を過ぎると、本郷通りの左に滝野川公園と平塚神社、そして反対側には旧古河庭園があり、都心にしてはそれなりに緑の多い地域だ。秋などは走っていても気分のいい場所なのだが、今はもう汗まみれである。
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 旧古河庭園の前の三叉路を右に行けば駒込方面なのだが、私の10kmコースは左へ。JRの田端駅を目指す方向だ。ここからはクルマの交通量がぐっと少なくなり、あたりは静かになるのだが、道路が南東を向いているので、朝の遅い時刻になると正面からまともに日射を浴びてしまう。今の時期にそれではたまらないから、どうしてもなるべく朝早く走り出すことになるのだ。

 この道を走っていて、実は興味深いことが一つある。

 池袋駅からJR湘南新宿ラインの北行きの電車に乗ると、山手貨物線を走って駒込駅付近まで来た後、山手線の下をくぐって短いトンネルに入り、それを出ると左カーブを続けながら京浜東北線と並行するようになる。私が今走っている道路は、この山手貨物線・中里トンネルのちょうど真上を通っているのだ。
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 中里トンネルは昭和3年の竣工だそうである。トンネルが通る位置の真上に既に住宅が建ち並んでいたことから、開削方式は採れず、山岳トンネル(上を掘らずにトンネルだけを掘る)方式で建設されたという。かつてあった田端の操車場が、大宮方から上野方に向かって貨車を動かし、列車の編成を行っていたために、山手貨物線を北上してきた貨物列車が田端でスイッチバックする必要のないよう、大宮方へ直接行けるルートを作る、というのが中里トンネル建設の目的だったそうである。

 中里トンネルの真上を過ぎると、その先には短い道路橋があって山手線(駒込・田端間)の線路を超える。その橋を渡ったところで私のコースは右に曲がるのだが、その先はぐんぐんと坂を下る道である。再び左に曲がり、クルマも通らないのにやけに道幅の広い道路を行くと、これまた下り道が続く。地図データを調べてみると、短い間に標高差10m近くを一気に下りてしまうのだ。それを下りきり、田端駅から下りてきた道路と交差する所が、谷田橋という交差点だ。

 谷田橋という名前が残っている通り、かつてはここに川が流れ、橋がかかっていた。谷田川、または藍染川と呼ばれた川である。不忍池に流れ込んでいた川で、上流は西ヶ原四丁目付近。つまり、さっき都電の線路を渡った踏切のあたりから流れてきたわけだ。更に遡れば、その水源は王子へ流れる石神井川であったとも言われる。いずれにしても今は暗渠になっているから、地上を眺めていても川の面影は全くない。要は、私は中里トンネルの上から藍染川の川の高さまで降りてきた訳で、下り坂が続いたのも道理である。

●谷田橋 → 谷中商店街 → 団子坂下

 谷田橋を過ぎて、不忍通りの一本北東側の一方通行の道を走り続け、西日暮里駅に向かう広い通りを渡ると、谷中の商店街が始まる。ここも昔ながらの割には元気な(印象のある)商店街で、私はジョギングでなく散歩に来ることもたまにある。谷中は都心の中でも面白い町である。
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 日暮里駅の方向から続く谷中銀座商店街とぶつかる三叉路のあたりは、商店が開いている時間帯は特に賑やかだ。路地裏が狭く、レトロな雰囲気を良く残しているので、モノ珍しそうにあたりを見物している外国人観光客も非常に多い所だ。

 商店街の中を走り続け、上野桜木から下りてきた道路(さんさき坂)と交差する。そのまままっすぐ南に向かえば、民家の間の狭い路地がくねくねと曲がった、通称「谷中のへび道」。これこそ先ほどの谷田川(藍染川)の名残なのだ。

 「へび道」を行かずに「さんさき坂」を右に曲がると、その先が不忍通りの団子坂下交差点である。
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●団子坂下→団子坂上→白山上→白山下

 今日の10kmのジョギング・コース。いよいよクライマックスがやってきた。団子坂の上りである。8.8kmほど走って来て、最後に標高差12mの上りだ。このイジメられ感が何とも言えない。最近の新築マンションは1フロアの天井の高さが2.4mぐらいだそうだから、それとの対比で考えれば、標高差12mというのはそれなりの上りである。江戸時代はもっと急な坂だったそうだが、自動車交通の時代になって、これでも穏やかな姿になったようだ。
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(再掲)

 団子坂上の信号まで来たところで、いつも私はヘトヘトになっている。そこから白山上まではまだ微妙に上っているのだが、ここまできたらもう惰性のようなものだ。やがて本郷通りを渡り、旧白山通りを渡り、その先の坂道を万有引力に任せるようにして走り下りていくと、今朝のスタート地点である白山下交差点に到着する。(正確に言えば、片道三車線の白山通りを渡り切らないとゴールにはならない。)

 今日も、何とか走り終えた。タイムは凡記録だが、それはまあ仕方がないだろう。同じコースでも、その日の天候によって自分にとっての難易度は違うのだが、それが外を走る醍醐味でもある。上り坂あり下りあり、都電を横切り、鉄道トンネルの上を走り、そして川の跡を走った。巣鴨と谷中という昔ながらの二つの商店街は、今日もまた異なる表情を見せてくれた。だから、飽きないのかもしれない。

 それにしても今日は気温も湿度も高いから、止まるととたんに全身から汗が吹き出してくる。カーム・ダウンをしながら、帰宅したら熱いシャワーを浴びよう。そして、家族と共に朝食を終えたら、今日は何をしようか。

 週末の朝は、まだ始まったばかりである。

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