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続・聖地巡礼 - 穂高・岳沢 (1) [山歩き]

 上高地へ向かう車窓の最大の楽しみは、大きな右カーブを切ると突然現れる大正池と、その彼方の穂高連峰の眺めである。8月3日(土)の朝7時20分に坂巻温泉から乗ったタクシーがこのポイントに差しかかったのが7時半頃。だが今朝は穂高の稜線に雲がかかっていた。

 「う~ん、今日はちょっと残念か・・・。」

 タクシーに同乗されている、私より十年先輩のWさん、Aさんの口からも、私と同じ言葉が出た。私たちが楽しみにしていた眺めは、今回ばかりはお預けなのだろうか。

 ところが、山の神様のお計らいがあったのか、山の上を覆うガスはそれから見る見ると晴れて、約5分後にタクシーが上高地バスターミナルに着く頃には西穂高岳から奥穂高岳、そして明神岳へと続く稜線が姿を現わし始め、それから歩いて河童橋に着く頃には、山はすっかり快晴になった。

 河童橋からの穂高の眺め。その写真はいささか定番ではあるが、本物は何度見ても飽きることがない。特に盛夏の今は、屹立する岩とまぶしい緑、白い雪渓と空の青。その組み合わせが何とも絶妙だ。上高地に来たからには、何としてもこれを眺めていたい。
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 河童橋では、二日前に涸沢に入り、北穂高岳に昨日登ってきたI先輩夫妻とE先輩、そして同期のT君が待っていた。そして、前日は小梨平で過ごされたOGの方々3名もほぼ同時に集合。S先輩も姿を見せて、これで朝8時集合組が揃った。ベンチで共同の装備や食糧の荷分けを始め、それが済んだら穂高をバックに笑顔で記念撮影。私たちにとっての「岳沢大集合2013」が、いよいよこれから始まるのだ。
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 私が高校時代に属していた山岳部は、歴代の夏合宿を穂高の岳沢で行ってきた。上高地の河童橋から真正面に見える、あの大きな沢の上部にテントを張り、一週間の定着合宿をするのが常だった。その間に、岳沢を巡る山々に登り、雪渓でピッケルの使い方を訓練し、もちろんテント生活の基礎を学び・・・。そんな生活をしている間に、皆が岳沢の虜になった。だから、大学生になってからも後輩たちの夏合宿の面倒を見たり、岳沢から様々なバリュエーション・ルートに登ってみたり、といったことが代々受け継がれてきた。そんな穂高の岳沢は私たちにとっての聖地なのである。

 そんな学生時代から長い年月を経て、それぞれ50代・60代になったOB・OGたちの間で、再び岳沢に集まろうという企画が初めて実現したのが、一昨年の夏だった。それはまさに聖地巡礼とも言うべきものだった。(そのことについては、以前にも書いたことがあった。)そして、昨年は9月、今年は再び8月に岳沢で集まることになった。

 この山岳部出身者の集まりとは別に、T君と私は中学・高校の同級生たちを中心にした週末日帰りの山歩きをこの何年か続けてきた。その活動と山岳部の聖地巡礼とが今回はコラボのようになって、私たち同級生組6名も「岳沢大集合2013」に加わることになった。総勢20名。同じ学校の出身ではないが、山仲間のH氏もジョインしてくれている。お互いに山が好きならば、いつでも仲間になれる。山とはそういうものである。
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 河童橋から岳沢道へと向かっていくと、既存の林道に並行して新たな遊歩道が作られていた。自然保護のためだろうか、尾瀬のような木道が続いている。それはちょうど岳沢道が始まるところで終わっていて、私たちはいよいよ山道に入る。何だか誘い込まれるような深く静かな森は、昔と少しも変わっていない。今年もまた岳沢にやって来た、それを実感することが、私には何とも嬉しい。
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 岳沢道を登る時、最初の休憩場所はいつも7番プレートの先の風穴だ。岩穴の中に氷が残っているので、夏でも冷気が漂い、実に涼しい。ここまでの登りで早くも噴き出してきた汗をぬぐい、ペットボトルの水で喉を潤す。
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 6番プレートと5番との間で、山道は一度岳沢の広い河原に出る。鬱蒼とした森から一転して展望が開け、西穂高の稜線の緑がまぶしい。振り返れば、上高地の南の六百山が、とんがり帽子のような姿を見せている。
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 岳沢道は河原を離れて再び緑の中を上る。傾斜は次第に大きくなっていくが、その分だけ高度は着実に稼いでいく。3番プレートや2番のあたりは上りのハイライトだが、ここを頑張ればゴールは近い。1番プレートに着けば、岳沢の本流の向こうに岳沢小屋が見えてくる。

 11時50分、私たち同級生組は岳沢小屋に到着。それはちょうど、奥穂高岳や前穂高岳の登頂を終えて重太郎新道を下りてきた登山者たち、とりわけ韓国人の大パーティーで小屋の前が賑わっている時間帯だった。

 ひとまず私たちは小屋に近い所にテント二張分の場所を確保し、設営を始める。テント場の向こうには扇沢の雪渓がたっぷりと残っていて、その奥に立ちはだかる奥穂高岳の吊尾根はガスの中に隠れ、その分だけ沢の深さが際立っている。
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 私たちがテントを設営している間に、年上のOB・OG組も順次岳沢小屋に到着。すぐにOGたちが中心になって昼食の準備が始まり、そちらは素麺、わが隊はT君お得意の芋煮鍋だ。出来上がったものをお互いに振る舞い合って、楽しい午後となる。そのうちに、東京を朝出て上高地を正午に出発したOB・OGの5名が到着。その頃にはもう山から下りてくる登山者もなく、小屋の前のテラスを私たちはゆったりと利用することが出来た。
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 互いに持ち寄ったアルコール類も開封され、静かな夕方を迎えはじめた岳沢の眺めを、私たちは存分に楽しむ。やはり今年も、岳沢にやって来てよかった。

 (To be continued)

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