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春まだ浅き・・・ - 小仏城山・景信山 [山歩き]


 3月21日、春分。前日の雨をもたらした気圧の谷が夜の間に東へ抜け、この日は朝から強い北風が吹き込み、よく晴れていたが寒いお彼岸となった。父の墓参りに出かけた時も、東京の西の郊外ではケヤキの枝が風に揺れていた。

 明けて22日の土曜日。風はおさまり、朝から穏やかな快晴になった。早春の低山歩きには絶好の日和だ。私たち10人の山仲間は、JR相模湖駅を朝08:15に出るバスを目指して、各方面から三々五々集まった。水曜日のお昼に声をかけて土曜日に挙行という、間際になってからの企画にもかかわらず、よくぞ10人が集まってくれたものだ。

08:28 千木良バス停 → 09:32 小仏城山

 今回のコースは今までに何度も歩いている。小仏城山の標高が670m、景信山が727m、そして陣馬山が857m。先週の日曜日に箱根の明神ヶ岳(1,169m)に登った時の経験では、標高1,000m前後あたりからは2月の大雪がまだ融け残っていて、山道は相当ぬかるんでいた。この時期に歩きたい山は他にも色々あるが、今日のこのコースぐらいの低山であれば、山道のぬかるみも限られているのではないか。それに、泥で足元が汚れるから、出来れば下山後に温泉に寄れた方がいい。

 千木良バス停からの登山道は、よく整備された歩きやすい道だ。日当たりがよくて、予想通り山道は乾いている。道志の山々の彼方に頭を出した富士山を時折眺めながら、高度を稼ぐ。
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 それにしても今日は素晴らしい天気になった。真冬のような青い空と、春分を迎えた太陽の明るい光。そして、まだ芽吹きも始まっていない、それでも真冬とはどこか違う木々の佇まい。そんな組み合わせが何とも不思議だ。

 一時間強をかけて登山道を登りきると、小仏城山のピークに到着。茶屋のすぐ下にちょっとした緑地があって、富士山を眺めるには絶好の場所だ。純白の富士山はいつ見ても素晴らしいが、大雪の名残をまだ身にまとった大室山(1,588m)も、今日は実に立派である。
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(大室山、加入道山と富士山)
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(遠く南アルプスも見えた)
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 東京の都心では、ちょうど一週間後に桜が開花するとの予報なのだが、この山頂に立つ桜の木は、まだ蕾も小さくて固いままだ。山の春は、気長に待たねばならない。

08:45 小仏城山 → 小仏峠 → 10:35 景信山

 富士山を眺めてまだもう少しゆっくりしていたいが、先へ進もう。ここから小仏峠までは北に向かって降りて行く道だから、陽が当たらない。案の定、山道のぬかるみがすぐに始まったので、慎重に下っていく。計画よりも20分遅れになってはいたが、無理に急ぐ訳にはいかない。

 小仏峠の少し上、廃屋になった茶店の前に、富士山の眺めのよいスポットがある。相模湖が眼下に見えていて、構図としても悪くないのだが、人によっては、すぐ目の前の杉の木の赤茶色をした花粉が気になるかもしれない。
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 小仏峠から景信山までは標高差180mほどの登り返しになる。しばらくは樹林の中の黙々とした登りだが、やがて右手の展望が開けると、景信山の山頂がもう見えている。小仏城山では木々の陰にかくれていた丹沢の山々が姿を現わした。その姿に元気をもらいながら、山頂直下の登りを頑張ろう。
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 景信山の山頂には二軒の茶店があるのだが、今日は丹沢の眺めが何とも素晴らしいので、それを楽しむために、下の方の茶店のベンチを借りて小休止。この山頂には今まで何度も来ているのだが、これほどダイナミックな丹沢の姿は見たことがなかった。
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(景信山から眺めた丹沢の山々)
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 この場所もまた、いつまでもゆっくりしていたかった。

10:50 景信山 → 底沢峠 → 12:30 明王峠

 景信山から先、しばらくの間が一番ぬかるんでいるだろうと、今までの経験から想像していた。だが、思っていたよりも長く、ぬかるみは続いた。底沢峠までの間に、堂所山(731m)を含めて四つの小さなピークがあり、それぞれに南面を巻くショートカット・コースがあるのだが、そこは南向きだから道が乾いている。だが、それ以外の箇所には、あのバレンタインの日の大雪からもう一月以上が経つというのに、まだ雪が一部残っていて、山道の真ん中は泥沼のようだ。すれ違う登山者も多く、また少なからぬトレイル・ランナーが駆け抜けていくので、いつものようなペースでは歩けない。結局、この区間でも時間を喰い、予定よりも30分ほど遅れて明王峠に着いた。
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 計画では、明王峠で昼食をとった後、陣馬山のピークまで登るつもりだったのだが、時間はだいぶビハインドだ。メンバーの中には疲れも見えるし、下山の時刻が遅くなるとロジ回りの問題もあった。ならば、無理をすることはない。ここでゆっくり昼食を楽しみ、その先は奈良子峠から陣馬の湯へ下りることにしよう。

 明王峠は、富士山が大きく見える場所だ。そして、西丹沢の檜洞丸(1,601mから大室山へと続く稜線が、今日は惚れ惚れするほどダイナミックに見えている。それは、昨年の10月に、今日も来ているH氏と二人で登った、犬越路から小笄・大笄を経て檜洞丸に上がる稜線である。確かにあれはなかなか手応えのある登りだったのだが、あの尾根がこんな風に見えるとは。そう思うと、ちょっと誇らしくなった。
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(明王峠からの富士)
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(檜洞丸から大室山へと続く尾根)

 スポット天気予報によれば、今日は昼から南風が少し強くなるという。正午を過ぎて到着した明王峠では、今朝通過した山の頂上よりも、確かに風が吹いている。しかも、南風というわりには案外と冷たい風だ。山の春は、やはり一足飛びにやって来る訳ではないのだろう。

12:50 明王峠 → 奈良子峠 → 13:50 陣谷温泉

 明王峠を出て、奈良子峠までの尾根道をゆっくり登っていくと、見覚えのあるお二人の姿が見えた。高校山岳部で15年先輩にあたるHさんご夫妻だった。昨年、大きな病気をされたと伺っていたが、リハビリを兼ねてお元気に山を歩いておられるようだ。我々と反対側から歩いて来られたのだから、今日は陣馬山を登って来られたのだろう。まだ言葉が不自由なご様子だが、山岳部の先輩・後輩が偶然にも山の中で出会った、その喜びは、何も語らずともHさんの表情に充分現れていた。この先を景信山まで歩かれるのだろうが、どうぞお気をつけて。

 奈良子峠を過ぎると、もう道のぬかるみはなくなった。南西方向に緩やかに降りていく明るい尾根道で、以前にも歩いたことがあるが、なかなか気分のいいコースだ。引き続き空は青く、吹く風は明王峠と同じように冷たかったが、春分を過ぎた午後の光の明るさは格別だ。あたりの落葉樹も、ゆっくりと春を待っているのだろう。
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 50分ほどで山道が終わり、舗装道を更に10分も歩けば陣谷温泉だ。檜風呂を楽しみ、送迎バス(有料)に乗せてもらってJRの藤野駅に14:45に到着。缶ビールを買い求めて、駅のホームで乾杯!こんなフィナーレも、近場の山らしくていい。

 一週間後には、東京の街中も桜の季節を迎える。年度の変わり目で巷は何かと忙しくなるが、それらをやり過ごしたら、山桜を追いかけて、私たちはまた山へ行くことを考えるのだろう。

 山の春は遅い。遅いからこそ、春がやってきたことの喜びは大きい。今から一ヶ月後に、私たちはどんな景色を目の前にしているのだろうか。

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