サクラサク [季節]
春、三月。
桜の蕾が日々大きくなり、いつしかそれが緑色を帯び、そしてその先端にピンク色が見えるようになると、いよいよ開花も時間の問題だ。そのファイナル・カウントダウンの時期になると、毎年のことながら私たちはわくわくするものだ。
今年も、3/23(日)の夕刻に家の近くを歩いていて、或る桜の枝の蕾がもうそんな時期を迎えていることに気がついた。その時点では、東京の桜の開花予想日は3/28(金)だったのだが、平年に比べても気温の高い状態が続いていて、開花の時期は少し繰り上がる可能性が大きいと、気象予報士が繰り返し伝えていた。
そして、その翌々日の3/25(火)、東京の最高気温は20度を超えて、靖国神社の桜の開花が宣言された。平年より一日早いという。今年の冬は東京でも二度の大雪があるなど、寒さが厳しかった印象があるのだが、三月の中旬から一気に気温が上がったために、桜の開花準備も平年並みのペースに追いついたということなのだろうか。
昨年も一度調べたことがあるのだが、桜の開花メカニズムにはまだわからないことが多々あるものの、春になって花を咲かせるためには、真冬の寒さと春の暖かさの両方が必要であるらしい。前者は「休眠打破」と呼ばれるのだが、この本格的な寒さによって桜の木々は目覚めるそうだ。そして、後者の暖かさが開花のタイミングを決めるのだという。そこで一つの仮説として知られるのが、「積算気温」という考え方だ。簡便法として、2/1からの日々の最高気温の数値を累計していくという方法がある。その累計値が600度を超えたあたりが桜の開花日の目安になるというのだ。
試しに、2012年から今年までの3年について、東京都心の気象データを使ってこの作業をしてみると、以下のグラフのようになる。
今年は一昨年の2012年と殆ど同じレベルの、平年の積算温度を下回る寒い冬が続いていたが、3月中旬から急激に気温が上がり、3/25に積算気温が600度を超えた。そして、ちょうどその日に桜の開花が宣言されている。
2000年以降、今年までの15年について、東京で2/1以降の積算温度が600度を超えた日と桜の開花日とを比較してみると、15年間の平均で両者の差は0.8日。つまり、積算温度が600度を超えた翌日にはソメイヨシノが開花したことになり、年によって差のバラツキも比較的少ないことから、両者の間にはかなりの相関関係がありそうだ。
また、気象庁が桜の開花日を発表している関東地方の8都市について、今年の積算温度と開花日を調べてみると、下表の通りだ。積算温度が600度に到達した日から桜の開花に4日を要した銚子を除いて、7都市では両者の差が1日以内。東京、宇都宮、前橋、横浜、甲府では600度に到達したその当日に開花日を迎えている。
(赤字は600℃に到達した日、ピンク地は開花日)
私は同年代の山仲間達と週末日帰りの山歩きを楽しむことが多いのだが、この積算温度による手法を当てはめてみると、例えば山梨県の大月では今日(3/31)あたり、桜の開花を迎えているのではないだろうか。今後、毎日が平年並みの気温で推移するとすれば、東京の小河内(奥多摩湖)は4/10頃、山梨県の河口湖では4/13頃が桜の開花時期になるだろうか。
桜の開花が早かった昨年は、4/14(日)に奥多摩の浅間嶺(せんげんれい、903m)を訪れて、山頂の桜が辛うじて残っていた。今年は東京都心の開花日が昨年より9日遅いから、浅間嶺の桜は4/19・20の週末あたりが見頃になっているだろうか。そんな山行をタイムリーに企画したいものである。もちろん、春はお天気次第なのだが。
3/25に開花日を迎えた後も、東京では気温が平年を上回る日が続き、街中の桜はみるみる開花が進んだ。3/28の夜に私は会合があって上野公園のすぐ近くを訪れたのだが、金曜日の夜に桜が見頃となった上野の山は、花見客で大変な賑わいであった。
そして迎えた土曜日は朝から気温がぐんぐんと上り、桜の開花が更に進む。同じ桜並木を眺めても、朝と夕方では花の量が全く違って見えたほどだった。
この時期、私たちは一斉に咲く桜の花に目を奪われがちだが、よく見れば東京の街中にも小さな春があちこちで始まろうとしている。草や木によってそのペースは実に様々なのだが、少しずつ広がっていく輪唱のようにして、街には緑が甦り、花々に彩られていく。
そしてひとたび近郊の山を歩けば、一言に新緑といっても、それはミクロに見れば驚くほど種類の多い草木の若葉によって構成されていることがわかる。そしてその総体が一つの春の山なのだ。一即多、多即一といえば仏教的になってしまうが、そんな春の多様さが、私は好きだ。
明日からは4月。色々なことがリセットされて、新たに物事が始まる月だ。そうした浮世の慌ただしさにかまけていると、私たちはつい無意識に時を過ごしてしまいがちだが、やっと巡ってきた春を、今年こそしっかり見つめて行きたいと思う。
桜の蕾が日々大きくなり、いつしかそれが緑色を帯び、そしてその先端にピンク色が見えるようになると、いよいよ開花も時間の問題だ。そのファイナル・カウントダウンの時期になると、毎年のことながら私たちはわくわくするものだ。
今年も、3/23(日)の夕刻に家の近くを歩いていて、或る桜の枝の蕾がもうそんな時期を迎えていることに気がついた。その時点では、東京の桜の開花予想日は3/28(金)だったのだが、平年に比べても気温の高い状態が続いていて、開花の時期は少し繰り上がる可能性が大きいと、気象予報士が繰り返し伝えていた。
そして、その翌々日の3/25(火)、東京の最高気温は20度を超えて、靖国神社の桜の開花が宣言された。平年より一日早いという。今年の冬は東京でも二度の大雪があるなど、寒さが厳しかった印象があるのだが、三月の中旬から一気に気温が上がったために、桜の開花準備も平年並みのペースに追いついたということなのだろうか。
昨年も一度調べたことがあるのだが、桜の開花メカニズムにはまだわからないことが多々あるものの、春になって花を咲かせるためには、真冬の寒さと春の暖かさの両方が必要であるらしい。前者は「休眠打破」と呼ばれるのだが、この本格的な寒さによって桜の木々は目覚めるそうだ。そして、後者の暖かさが開花のタイミングを決めるのだという。そこで一つの仮説として知られるのが、「積算気温」という考え方だ。簡便法として、2/1からの日々の最高気温の数値を累計していくという方法がある。その累計値が600度を超えたあたりが桜の開花日の目安になるというのだ。
試しに、2012年から今年までの3年について、東京都心の気象データを使ってこの作業をしてみると、以下のグラフのようになる。
今年は一昨年の2012年と殆ど同じレベルの、平年の積算温度を下回る寒い冬が続いていたが、3月中旬から急激に気温が上がり、3/25に積算気温が600度を超えた。そして、ちょうどその日に桜の開花が宣言されている。
2000年以降、今年までの15年について、東京で2/1以降の積算温度が600度を超えた日と桜の開花日とを比較してみると、15年間の平均で両者の差は0.8日。つまり、積算温度が600度を超えた翌日にはソメイヨシノが開花したことになり、年によって差のバラツキも比較的少ないことから、両者の間にはかなりの相関関係がありそうだ。
また、気象庁が桜の開花日を発表している関東地方の8都市について、今年の積算温度と開花日を調べてみると、下表の通りだ。積算温度が600度に到達した日から桜の開花に4日を要した銚子を除いて、7都市では両者の差が1日以内。東京、宇都宮、前橋、横浜、甲府では600度に到達したその当日に開花日を迎えている。
(赤字は600℃に到達した日、ピンク地は開花日)
私は同年代の山仲間達と週末日帰りの山歩きを楽しむことが多いのだが、この積算温度による手法を当てはめてみると、例えば山梨県の大月では今日(3/31)あたり、桜の開花を迎えているのではないだろうか。今後、毎日が平年並みの気温で推移するとすれば、東京の小河内(奥多摩湖)は4/10頃、山梨県の河口湖では4/13頃が桜の開花時期になるだろうか。
桜の開花が早かった昨年は、4/14(日)に奥多摩の浅間嶺(せんげんれい、903m)を訪れて、山頂の桜が辛うじて残っていた。今年は東京都心の開花日が昨年より9日遅いから、浅間嶺の桜は4/19・20の週末あたりが見頃になっているだろうか。そんな山行をタイムリーに企画したいものである。もちろん、春はお天気次第なのだが。
3/25に開花日を迎えた後も、東京では気温が平年を上回る日が続き、街中の桜はみるみる開花が進んだ。3/28の夜に私は会合があって上野公園のすぐ近くを訪れたのだが、金曜日の夜に桜が見頃となった上野の山は、花見客で大変な賑わいであった。
そして迎えた土曜日は朝から気温がぐんぐんと上り、桜の開花が更に進む。同じ桜並木を眺めても、朝と夕方では花の量が全く違って見えたほどだった。
この時期、私たちは一斉に咲く桜の花に目を奪われがちだが、よく見れば東京の街中にも小さな春があちこちで始まろうとしている。草や木によってそのペースは実に様々なのだが、少しずつ広がっていく輪唱のようにして、街には緑が甦り、花々に彩られていく。
そしてひとたび近郊の山を歩けば、一言に新緑といっても、それはミクロに見れば驚くほど種類の多い草木の若葉によって構成されていることがわかる。そしてその総体が一つの春の山なのだ。一即多、多即一といえば仏教的になってしまうが、そんな春の多様さが、私は好きだ。
明日からは4月。色々なことがリセットされて、新たに物事が始まる月だ。そうした浮世の慌ただしさにかまけていると、私たちはつい無意識に時を過ごしてしまいがちだが、やっと巡ってきた春を、今年こそしっかり見つめて行きたいと思う。
2014-03-31 22:00
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