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十年の総括 [スポーツ]

 ブラジルで開催中のサッカーW杯大会は、一次リーグの全試合が終了し、決勝トーナメントに進む16ヶ国が出揃った。

 国民の大きな期待を背負った日本代表チームは、一勝も挙げられずに一次リーグで敗退。過去に出場したW杯大会当時に比べても、海外のチームで経験を積んだ選手が多くなり、より攻撃的なサッカーを目指したザック・ジャパンだったが、蓋を開けてみればその攻撃は決め手を欠き、逆にカウンターで守備を破られた。「惨めだけれど、これが現実。受け入れて明日から進んでいかないといけない。」という本田圭佑のコメントが、全てを物語っているのだろう。

 それは、私たちの会社にも当てはまるようなことだ。日々努力して技術に腕を磨き、高い品質のモノ作りをしていると自分たちでは思っていても、世界の競合先だって日々進歩している。うかうかして「次の一手」を怠ると、いつか差をつけられてしまう。そして、自信を持って世界に挑戦してみたはいいが、自分たちの意外なところに綻びが出たりするものだ。実力不足の所はまだ幾つもあるのだから、我々はもっともっと精進を続けなければならない。

 そういう意味では、今回のザック・ジャパンが簡単に勝ち上がらなかったのは、かえって良かったのかもしれない。世界は身近な存在にはなっては来たが、そこに追いついた訳ではまだない。世界と戦うとはどういうことなのかを改めてゼロから考え直してみる、良い機会とすべきなのだろう。
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 ところで、今年は途中からW杯関連のニュースに弾き飛ばされたようになっていたが、5月20日から始まっていた日本のプロ野球(NPB)の交流戦が、今週で終わった。読売ジャイアンツが16勝8敗で、交流戦では二度目の優勝。交流戦10年の歴史の中で、セ・リーグのチームが優勝したのはその二回だけだ。それでも、かなり極端なパ・リーグの優位が続いていた一頃に比べて、今年はパの71勝70敗3分だったのだから、結果は両者がだいぶ均衡した形になった。

 この10年間・・・と書いたところで、改めて思った。そうか、2005年のシーズンからセ・パ交流戦が始まって、今年でもう10年目なのだ。

 両リーグの優勝チーム同士による日本シリーズ以外には、セ・パのチームが真剣勝負で対戦することが長らくなかったNPB。それが俄かに実現することになったのは、2004年にNPBが激震に見舞われたことがきっかけだった。言うまでもなく、大阪近鉄バッファローズとオリックス・ブルーウェーブの「球団合併」構想がその年の6月中旬に明らかになったことだ。それは、プロ野球選手会によるスト権の確立を経て、9月中旬には初のストライキの実施へと発展することになる。その結果として、球団数を減らすことはひとまずなくなり、IT関連企業の楽天とライブドアが新たなオーナーに名乗りを上げて競い合うことになった。

 銀行の不良債権処理が大詰めを迎えていたこの年は、親会社の台所事情から、この近鉄・オリックス以外にも「第二の再編」が囁かれていた。(実際に、ダイエーが産業再生機構へ送られ、ソフトバンクが新たなオーナーとなる。) その他にも、「自由獲得枠」での選手の獲得にまつわる金銭の不正授受問題が表面化してセ・リーグ3球団の各オーナーが一斉に辞任。更には西武鉄道グループの不正経理問題から西武ライオンズのオーナーが辞任するなど、2004年はNPBにとってまことに多難な年であったと言う他はない。

 NPB史上初のストライキの実施にまで及んだ労使交渉の中で合意に至った事項の一つが、ファン拡大への施策としての「セ・パ交流戦」(日本版インターリーグ)の開催だった。翌2005年のシーズンから早速始まり、各球団が相手リーグの全球団とホーム、ビジターで3試合ずつ、つまり各球団が36試合の交流戦を行う、というのが当初の枠組みだった。もちろんそれは、公式戦の一環として行われるから真剣勝負だ。

 「人気のセ、実力のパ」と言われるものが、実際はどうなのか。投手も打席に立つセ・リーグの野球と、DH(指名代打)制を1973年以来続けているパ・リーグの野球とは、どんな風に違うのか。日本シリーズという限られた場面、限られたチームでしか比較できなかったことが、全チームについて可能になる。確かにこれは、プロ野球の人気向上策の一つではあったのだろう。
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(セ・パ交流戦の勝敗数差と優勝チーム)

 ところが、2005年・2006年と連続してパ・リーグのマリーンズが交流戦優勝を果たしたところで、試合数削減の要望がセ・リーグから出され、各球団36試合が翌年から24試合に減らされることになった。要するにセ・リーグ球団としては、交流戦をやることで自軍がジャイアンツ、タイガースといった全国区人気のチームと当たる回数が減るのは困るということだろう。(実際に、セ・リーグ下位とパ・リーグ下位の対戦では観客数が少ないのは否めない。)

 交流戦の導入を決めた時から、そんなことはわかっていたはずだが、ともかくも24試合制になったことで、交流戦の期間中は「2試合→移動日→2試合→移動日」という変則日程になり、比較的少ない人数で先発投手のローテーションを回せるために、しっかりしたエースがいるチームが相対的に有利になった。その結果、パ・リーグ球団が以前にも増して勝ち星を重ねるようになり、優勝もパの球団が続くという、セ・リーグにとっては何とも皮肉なことになった。

 両リーグの実力は、実際にどれぐらい違うのか。前述のように、今年は両者の差が比較的小さかった年だったのだが、3月28日に開幕してから5月18日までのリーグ戦(各チーム41~43試合)と、5月20日から6月26日までの交流戦(各チーム24試合)の戦績を比べてみると、以下の通りである。
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 同一リーグ内での試合は得点と失点がゼロサムだから、リーグ全体で見れば総得点数と総失点数は同じである。これが、セ・リーグ内では1試合平均で4.6、パ・リーグ内では同3.7だ。これが交流戦になると、セ・リーグ球団の得点(=パ・リーグ球団の失点)は1試合平均で4.0、パ・リーグ球団の得点(=セ・リーグ球団の失点)は4.4となっている。

 また、セイバー・メトリックスの代表的な指標であるOPSとWHIPでも比較をしてみると、これも両リーグのパフォーマンスにそれほど大きな差がある訳ではないようだ。敢えて言えばパ・リーグの投手力が若干上なのかなとは思うが。

OPS (On-base Plus Slugging) = 出塁率+長打率 = 〔(安打+四死球)÷(打数+四死球+犠飛)〕+(塁打÷打数)

WHIP (Walks plus Hits per Inning Pitched) = (安打+四球)÷投球回数

 (WHIPは本塁打もシングルも区別しないから、「どれだけ大きいのを打たれたのか」が数値に表れないところに難があるといえばあるのだが。)

 そんな中、今年はセ・リーグ側から交流戦の試合数を更に削減したいとの申し入れがあったことが報じられている。パ・リーグはそれを了承しておらず、結論は出ていないようだ。

 「2試合 → 移動 → 2試合 → 移動・・・」という相対的に移動日の多い日程は効率が悪い、というのが理由なのだそうだが、それを言うなら元々の36試合制に戻して、リーグ戦と同じように三連戦を一つの単位にすればいい。それを2試合に減らしたいと言い出したのはセ・リーグだったのだ。それに、現行の24試合から更に減らすとなると12試合だから、「1試合 → 移動 → 1試合 → 移動・・・」となり、更に効率の悪いことになる。

 これはもう、「交流戦なんかやりたくない」と言っているのに等しいのではないか。だとすれば、多難だった2004年の出来事を踏まえて、プロ野球の人気向上策として交流戦を導入することに選手会との間で合意した、あの時の精神はどこへ行ってしまったのだろうか。

 私ははやり、他リーグの各球団とホーム、ビジターで3試合ずつ当たる36試合制に戻すべきだと思う。そして、交流戦を今のようにスポンサー付の一時期のイベントにする必要はもうないし、優勝チームを決める必要もないだろう。18試合ずつ前期・後期に分けてもいいから、年間144試合の公式戦の一環として当たり前のように組んでしまえばいいと思う。年間144試合の内、交流戦が36試合ならちょうど1/4だから、バランスもいい。そして、夏のオールスター・ゲームは、やるとしても1試合で十分だろう。更に言えば、144試合が終わった後の意味不明な「クライマックス・シリーズ」はやめるべきだ。

 セ・リーグの問題は、「金持ち・人気球団」とそうでない球団との格差が大き過ぎることに加え、首都圏の3球団の本拠地球場がいずれも狭いことだ。外野の左中間と右中間の膨らみが少ないために、他の9球団の球場に比べてフェアー・ゾーン面積が600~800㎡も狭いのだ。リーグ全体の試合の半分がこうした球場で行われ、しかも優勝を争うチームの顔ぶれは毎年同じだ。(直近10年を見ると、セ・リーグ優勝は3球団。一方のパ・リーグは5球団。)こんな世界の中に閉じこもり、交流戦もやりたくないというセ・リーグは、自らの将来をどのように考えているのだろうか。
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 サッカーが世界中で行われ、FIFAのような国際組織があって四年に一度のW杯大会が行われるのに対して、野球人口のある国はもっと限られ、その中で米大リーグ(MLB)の存在がガリバーだから、WBCのような国際大会がうまく機能していない。国際化といっても、それはMLBでプレーすることとほぼ同義語になっている。

 そんな中で、これからも人口が減り続ける日本でNPBをどうやって維持していくのか。今までにないような様々なチャレンジが必要ではないのか。それなのに、セ・リーグが交流戦すら減らしたいと言っているようでは、その将来は推して知るべしというものだろう。

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