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真夏の雪 - 鳥海山・月山 (2) [山歩き]


 8月3日(日)、予定通り午前4時頃に目が覚めた。T君のクルマの二列目・三列目を倒しての仮眠だったが、暑くもなく寒くもなく、よく眠れた方だ。窓の外は北東方向の空だけが白んでいて、反対方向はまだ夜が支配している。明るくなるにつれて、空の星は次第に姿を消していくのだが、それに反比例するように、遠くの山々や日本海の海岸線がはっきりと見えてくる。標高1150mの鉾立駐車場は、素晴らしい快晴の朝を迎えようとしていた。

 私たちと同様に車内で仮眠していた登山者たちが次々に起き出してきて、まだ朝の4時過ぎだというのにあたりは賑やかになってきた。T君がコンロで湯を沸かし、アルファ米にレトルト食品をかけて、私たちは朝食を済ませる。登山の支度を整えて4:50に歩き始め、駐車場の北端の展望台に立ち寄ると、早くも雄大な眺めが広がっていた。今日一日、この調子なら相当な数の写真を撮ってしまいそうだ。
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(鉾立駐車場展望台から秋田方面)
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(秋田駒ヶ岳(遠景中央)と、その右が岩手山)
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(これから登る鳥海山)

4:58 象潟口登山口 → 6:07 賽の河原 → 6:43 御浜小屋

 象潟口登山道はよく整備されていて、その入口からは石畳の道が続く。既にこの山の森林限界を越えているので、緩やかに尾根を上っていく登山道は最初から眺めが良い。歩き始めてからすぐ、南側に庄内平野の展望が広がるのだが、日本海の海岸線の方向を眺めると、鳥海山の山体の影が海の上に映っている様子を見ることができた。鳥海山名物のこの光景、話には聞いていたが、よもや自分の目で見られるとは。朝一番から私たちのテンションは上がりっ放しだ。
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(日本海に映る鳥海山の影)

 今日の目的地である鳥海山の山頂付近を遠くに眺めながら、見晴しの良い穏やかな上りが続く。そして、歩き始めてから45分ほどで石畳が途切れ、小さな雪渓が現れて、それを渡ることになる。確かに北向きの斜面ではあるが、標高1500m前後の地点に8月になってもなお雪渓が残るとは驚きだ。
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 この雪渓沿いに斜面を登りつめ、地形が平らになった場所が「賽の河原」だ。ここにも雪田が残っていて、その雪を踏みながら歩くことになる。このあたりから高山植物の花が急速に増えていくのが楽しい。
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(賽の河原の入口)
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 雪田を過ぎ、再び石畳の道になってちょっとした登りになり、その傾斜が緩やかになると、右手に御浜小屋が見えてくる。登山道からの展望は一段と広がって、秋田方面に青々とした日本海が続いている。そして、御浜小屋の前を通り過ぎて尾根の上から南側の展望が目の中に飛び込んで来た時に、私たちは思わず歓声を上げた。
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 碧い水を湛えた鳥海湖と、その周辺の真っ白な残雪、花と緑。背後に庄内平野が広がり、彼方には月山や朝日連峰の山並み。そして頭の上は青い夏の空。これはまさに地上の楽園ではないか。歩き始めてからまだ2時間と経っていないが、この景色を眺めることが出来ただけでも、東京からはるばるやって来た甲斐があったというものだ。
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(月山のクローズアップ)

6:55 御浜小屋 → 7:34 八丁坂の道標 → 7:45 七五三掛 → 8:10 千蛇谷コースとの分岐

 展望の素晴らしい御浜小屋を後に、私たちは山道を進む。あたりは広大な地形で、丘を緩やかに下ると八丁坂の登りが始まる。午前7時を過ぎたばかりだというのに、太陽の光はとても強い。おまけに日陰が全く出来ない地形で、直射日光を遮るものがない。今日は太平洋高気圧にポッカリと乗っているのか、風もあまり吹かないから、まだ標高1700m前後のこのあたりは暑く、体中から汗が噴き出してくる。
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 加えて、私は一つ失敗をしていた。せっかく持ってきた帽子とサングラスをT君のクルマの中に置いたまま、今朝は歩き始めてしまったのだ。後悔先に立たずだが、来てしまった以上は仕方がない。小休止のたびに日焼け止めを繰り返し顔に塗ることにした。

 7:45に七五三掛(シメカケ)という少し平らな場所に出る。鳥海山への山道は、ここから外輪山コースと千蛇谷コースに分かれていたのだが、後者は崩落によってルートが少し変わったようで、現在の分岐点はもう少し先にある。そこまで行くと、千蛇谷の豊かな雪渓が一望できた。そのルートは下山に使うことにして。私たちは分岐を右へ、外輪山コースを進もう。
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(山道の分岐から眺める鳥海山の千蛇谷)

 振り返れば、鳥海湖を眺めた御浜小屋もかなり遠く、下の方に見えている。だが、鳥海山の山頂まではまだだいぶありそうだ。
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(歩いて来た道)

8:15 千蛇谷コースとの分岐 → (外輪山コース) → 10:08 七高山

 外輪山コースは、鳥海山の山頂へと続く尾根を反時計回りに進んでいくような道だ。山道そのものには危険な個所はないのだが、尾根のすぐ左側はかなり高度差のある断崖になっている。

 先ほどの千蛇谷コースとの分岐点から標高差160mほどを登って文殊岳(2006m)という小さなピークまで頑張って上がると、そこから先は緩やかな登りが続くだけだ。地図を見ると確かにそうなのだが、ここまで強烈な日差しを浴び続け、大汗をかきまくって来た私たちは、水分補給には留意しているものの、いささか消耗してきた。
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 「日陰が欲しい!」と何度も呟く。天気が良いのは嬉しいことだが良過ぎるのも考えものだ、などと罰当たりなことが頭の中に浮かんでくる。そのうちに、鳥海山の頂上直下にある頂上小屋が明確に見え始めた。
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 行者岳という2159mの岩峰を過ぎると、外輪山を更に回って行くコースと、左の断崖をトラバースしながら頂上小屋へ向かう山道とが分岐しているのだが、今は後者は歩行禁止になっている。3年前の大地震の影響なのかどうか、山道の崩落があったのだろう。その先を更に標高差50mほどを登ると、鳥海山の山頂と頂上小屋が手に取るように見えてくる。そして、山頂の東側には驚くほどの分厚い雪が残っていた。
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 標高2200m前後の稜線に咲く花に励まされながら山道を更に進むと、七高山(2229m)という岩峰がすぐ先にある。そこまで登って西側を眺めると、雪渓を隔てた正面が鳥海山の山頂だ。そこまで行くには標高差50mほどを一度下って雪渓を渡り、頂上小屋まで行ってから山頂に登り返さなければならない。
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(七高山のピーク)
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(七高山から眺めた鳥海山頂上)

 秋田県にかほ市のHPに載っている登山マップによれば、鳥海山象潟口のコースタイムは鉾立駐車場から山頂まで上り4時間40分となっている。私たちは朝4:58に出てきて今が10:08だから、休憩も含めて5時間10分を要している。あの山頂までも、まだ30~40分はかかりそうだ。太陽に照りつけられて今日の私たちが消耗気味であることは確かなのだが、鳥海山の登山道は、思いのほか骨のあるコースだと実感。一息いれたら、また頑張ろう。
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(To be continued)


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