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秋の再訪 - 西丹沢・檜洞丸 [山歩き]

 西丹沢の山へ行く時は、いつも朝が極めつきに早い。

 登山の起点となる西丹沢自然教室に8時半に到着する朝一番のバスは、小田急の新松田駅前を7時20分に出る。そこから逆算すると、都内の自宅を4時50分には出なければいけない。要するに4時起きだ。といって、前夜に早く就寝できる訳でもないから、寝不足で出かけることは避けられない。この日も実質は3時間睡眠だったので、新松田から乗り込んだバスの中ではウトウトし続けていた。

 そのバスは定刻に終点へと到着。私たち5人のメンバーは身支度を整え、H氏が予め作成しておいてくれた登山届を出して、計画通り8:40に行動を開始した。H氏の山仲間のTさんとMさん。それにH氏や私と同年のKさんが紅一点だ。私はTさんとは初対面だったが、お互いに山が好きな人間同士。一緒に歩き始めれば、もう仲間だ。
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(朝の西丹沢自然教室前)

 私にはちょっとした事情があって、この先1ヶ月ほどは週末の山歩きにも参加できなくなる。そのことを事前にH氏に伝えたところ、それならばその前に一度ガッツリ系の山へ行こうというお誘いをいただいた。しかもH氏との間では、どこへ行くかも「阿吽の呼吸」で最初から決まっていたようなものだった。西丹沢自然教室から犬越路を経由して時計回りに檜洞丸(1601m)に登って来ようというプランである。登山地図に載っているコースタイムは6:35、累積標高差が1300m超というなかなかしっかりしたコース。そこに去年の秋にH氏と私は二人で登り、そのガッツリとした手応えが忘れられずにいたのである。

08:40 西丹沢自然教室 → 09:05 用木沢 → 10:15 犬越路

 バスの終点から用木沢の出合までの林道歩きは、コースタイムを縮めようがない。せっせと歩いていると、既に紅葉が始まった彼方の山の斜面に朝日が当たり、それだけでも華やいだ雰囲気だ。そして振り返れば、沢の対岸にある直ぐ近くの山でも思っていた以上に紅葉が進んでいる。やはり、秋の山は楽しいな。
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 用木沢出合から右へ山道が分かれ、沢に沿って暗い森の中へと入っていく。立派な鉄橋で沢を渡り、その先では木製の簡素な橋で支流を更に渡る。そうして段々と犬越路への登りが始まるのだが、落葉樹の深い森の中を行くこの道は気分がいい。朝日に向かって登っていくようなところが、私は好きだ。
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 「犬越路まで600m」という道標が立つあたりからが、この登りの核心部だ。傾斜がきつくなるのだが、1年前に来た時よりも山道の改良が進んでいた。土嚢が積まれた所や、新たに設置された木製の梯子などを通ってせっせと登ると、10:15に犬越路に着いた。檜洞丸と大室山(1587m)に挟まれた鞍部ながら日当たりの良い場所で、南側には登って来た谷を見下ろし、これから登る檜洞丸への尾根が東側に見上げるような高さで続いている。神奈川県の中ではあるが、かなり秘境ムードのある場所だ。
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10:20 犬越路 → 11:40 小笄の少し先

 檜洞丸を目指して、尾根道を登る。ここからは正面から太陽に照らされる道だ。空はよく晴れ、吹く風が少し強い。だがそれは妙に生暖かく、この季節にしては気温が高いようで、風通しのよい半袖の衣類でも十分なぐらいだ。私はもうすっかり汗まみれで、長袖を着て来たことを後悔していた。

 犬越路から20分ほど登った所で、それまで右手に木々の間から見え隠れしていた富士山が、初めてその全容を現した。今年の初冠雪が9日前の16日。そして一昨日までの2~3日も下界では雨の日が続いたから、頂上付近の雪の白さが本当に鮮やかだ。
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 高度を上げるにつれて進んでいく周囲の紅葉にも見とれる。元々が展望に優れた尾根道だから、この季節は登山道の周りの赤や黄色と彼方の山並みの両方が存分に楽しめるのだ。そして、登山者の数はそれほど多くない。去年の秋にここを歩いたH氏と私がすっかり魅せられてしまったのは、そんなところにあるのかもしれない。
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 犬越路から50分ほどで、小笄(ここうげ)へと上がる鎖場の直下に到着。気温が上がったためにその間に東方からムクムクと雲が湧き、結果的にはそこから見る富士山頂が、この日に眺めた最後の姿になった。
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 そこから幾つかの鎖場を越える。本日の紅一点のKさんは、今年の1月から私たちの週末山歩きに参加されるようになったのだが、こういう鎖場の上り下りはおそらく今日が初めての筈だ。しかし、そんな風には見えないほどKさんは軽快に登って行く。この感じなら今日一日大丈夫だろう。それよりも私の方が、何やら普段よりも体が重くて元気が出ない。やはり寝不足が祟っているのだろうか。

11:45 小笄の少し先 → 大笄 → 12:13 熊笹ノ峰 → 12:45 檜洞丸

 小笄付近は三角点が目立たない所にあるので、つい気付かずに通り過ぎてしまう。振り返ると、犬越路では間近に見上げていた大室山がだいぶ遠くなり、その右奥に奥多摩から奥秩父の主稜線が続いている。海に近い丹沢周辺よりも、今日は北の方が雲も湧かずによく晴れているようだ。
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(大室山を振り返る)

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(奥多摩・奥秩父の山々)

 岩場の連続が終わり、大笄(おおこうげ)付近からはしみじみとした味わいの眺めになってきた。先週の日曜日には、ここよりも400mほど標高の高い小金沢連嶺を歩いたが、植生の違いはあるとしても、今日の西丹沢の方が紅葉は鮮やかで印象的だ。
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 先週の小金沢連嶺ではブラームスの第3交響曲の第2楽章が思わず浮かんできたが、今日の西丹沢の紅葉の賑やかさは、さながら第2交響曲の祝祭的な第4楽章だろうか。その後半でオーケストラが高らかに鳴り響いた後に音程が急降下し、弦楽器だけが低音で第一主題を朗々と響かせる、その部分が今日の眺めには良くお似合いだ。
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 いよいよ檜洞丸のピークも行く手に見えてきた。そこから山道が一度左に回り込み、軽い上り下りを繰り返しながら左手の展望が開けてく所が、このコースでは私のお気に入りの一つだ。木々の向こうにひっそりと聳え立つ丹沢の最高峰・蛭ヶ岳(1673m)。いつ見てもいい山である。
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(正面奥が檜洞丸)

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(蛭ヶ岳)

 さあ、いよいよ檜洞丸への最後の登り。ところが、このあたりから両方の大腿部が痙攣を始めてしまい、私は他のメンバーに遅れをとってしまった。いつもより体の重い感じが入山時から続き、ここまでもあまりピッチが上がらなかったのだが・・・。仕方なく、持ってきたエアー・サロンパスでともかくも痙攣を治め、山頂に上がる。Kさんが心配して山頂の入口で待っていてくれた。いやはや、面目ないことである。
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 檜洞丸の山頂は、いつになく賑わっていた。私たちがこれから降りる「つつじ新道」を登って来た人たちが多いのだろう。この山に来たのはこれで5回目だが、富士山が雲の中に隠れていたのは今回が初めて。南側の同角山稜の方から雲が次々に沸き、上空は晴れているが周囲の山は半分ぐらいが雲の中だ。山頂の西端からの富士山や南アルプスが見えないのは残念だが、ともかくも私たちはそれぞれに持ち寄って来たものを分けながら、山頂での昼食を楽しむことにした。
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(檜洞丸の山頂にある祠)

13:25 檜洞丸 → 14:20 展望園地(5分休憩) → 15:00 ゴーラ沢出合 → 15:35 西丹沢自然教室

 昼食を終えて檜洞丸の山頂を出た時刻は、山地図のコースタイム通りに作った計画から30分のaheadだった。計画では西丹沢自然教室を16:25に出るバスに乗る予定だったが、今から下山を始めれば2時間ちょっとでバス停に着くから、一本早い15:40発のバスに乗れそうだ。それで予定より早く小田原へ出れば、居酒屋での「反省会」もゆっくりできる。先頭を行くH氏のそんな誘導に乗せられて、私たちは下りを頑張ることにした。
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 一本調子の下りをガンガン降りたつもりだったが、ほぼコースタイム通りのペースで展望園地に到着。そこから下も案外と長かったが、15:00にゴーラ沢出合に着き、浅瀬を見つけて渡渉。あとはブナの森の中の緩やかな下り道だ。この下り道が沢筋を反れて右に曲がると、檜洞丸の稜線はもう見えなくなってしまう。私はそこで後ろを振り返り、朝から楽しんできた紅葉の山並みに別れを告げた。
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 結局、一本早いバスには間に合ったのだが、もう満席で座れない。これから1時間以上も立席なのはかなわないから、45分後の本来のバスに乗ることにしよう。西丹沢自然教室の前にはテーブルとベンチもあるから、そこでゆっくりするのも悪くない。こんな時に「先立つものはまずビール」だが、先頭者として下って来たH氏が、手回し良く近くの売店でもう既に調達してきてくれている。

 乾杯! お疲れさまでした! よく頑張ったね!あたりの黄葉を眺めながら、下山後の0次会がなごやかに始まった。

 いい山だった。組成をしていただいたH氏には改めて御礼を申し上げたい。またいつか、このメンバーでどこかの山へ出かけたいものだ。

 冒頭に記したように私自身はこれから向こう1ヶ月前後、山はお預けになるのだが、その間はしっかりと養生をすることにしよう。
 
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コメント 1

H氏

今回はガッツリ歩けて良かったです。両足、痙攣されているとも知らず失礼しました。次回、是非「芍薬甘草湯」(小林製薬とか津村から出ています)をお試し下さい。即効性があり、アラカンの友です。
また年内、復帰登山をしましょう。朝早くて申し訳ないですができれば同じ面子で丹沢を責めたいものです。

by H氏 (2014-10-30 23:50) 

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