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暖機運転 - 高尾山・小仏城山・景信山 [山歩き]

 新嘗祭の三連休の初日。朝から晩秋の澄み切った青空が広がっている。京王線の電車が多摩川の鉄橋を渡る時には右手の窓に奥多摩の山々が並び、大岳山の尖った山頂がすぐにそれとわかる。そして、視線を左に動かしていけば、丹沢の山並みが一際鮮やかで、その向こうに富士の高嶺が鎮座している。二日前の木曜日に東京で降っていた冷たい雨が山では雪だったようで、富士山もずいぶんと下の方まで雪景色になった。

 高尾山へ行くには、京王線の新宿を朝7:30に出る最初の特急が便利だ。乗り換えなしの46分で終点の高尾山口まで行ける。この日の朝もこの電車を利用した登山客が多く、山の麓の終着駅は早くも賑わっている。私は飲み水のペットボトルを売店で買って、早速登山口へと向かった。

 私にとっては28日ぶりの山である。というよりも、先月末に十二指腸に小さな手術を受けてから23日目。そのための入院生活を終えてから12日目。いずれにしても、この1ヶ月近く、ロクに体を動かしていなかった。今日はそのブランクを多少なりとも埋めるためのリハビリのようなものだ。

 これから高尾山(599m)、小仏城山(670m)、景信山(727m)を経て小仏バス停まで、距離にしてちょうど10km、登山地図上のコースタイム4時間10分のルートを歩くつもりでいる。この三連休の最終日あたりに実行してみようかと考えていたが、実家の都合が変わって今日の方が自由になった。高尾山の周辺ならば、前夜にスケジュールが決まっても対応できる山域だから、気が楽である。
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(三つの山を越えるコース)

08:27 高尾山口駅前 → 09:00 稲荷山展望台(2分休憩) → 09:32 高尾山山頂

 既に長い行列が出来ているケーブルカーの乗り場を尻目に、その左側に隣接する登山道入口から、さっそく山道の登りが始まる。高尾山の稲荷山コース。高尾山に上がる多数のルートの中で一番南側にあり、一番距離が長い。リフトやケーブルカーとは無縁のルートだから登山者も相対的には少ないだろう。

 私の退院日から9日目の今月19日の外来診療で、執刀医から最終的な説明を受けた。今回の手術で治療は完了。術後の経過も順調なので、刺激物やアルコールの摂取、そして激しい運動は、あと二週間我慢すれば解禁とのことだった。といっても、ハイキング程度なら「激しい運動」には入らないと元々言われていたから、それならばリハビリのような低山歩きをそろそろ始めてみようか。まあ要するに、じっとしているのもそろそろ退屈になった、というのが本音のところである。

 従って今日は、「上りでは息づかいが荒くなるほどペースを上げず、下りでは走らないこと」を自分に言い聞かせながら歩いてみることにした。歩行距離10km、上りの累積標高差が900m、下りのそれが800mだから、無理のあるコースでは全くないし、そういう「暖機運転」で歩いてみた結果がコースタイムとどれほど違うのかも、今後の参考になることだろう。

 稲荷山コースを登り始めて10分もすると、ゆっくり歩いているとはいえ暑さを感じるようになり、朝から着ていたウィンドブレーカーを脱ぐ。植林の中の比較的単調な山道だから、何に気をとめるでもなく黙々と歩き続けると、東屋の前にちょっとした展望台のある場所に着いた。地図上では稲荷山となっている付近だ。真東から少し北寄りの方角に下界の展望が開けていて、所沢のドーム球場の屋根などが見えている。
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 稲荷山から先も淡々とした登りが続き、あまり印象に残る景色はない。そのうちに6号路が右から合流するあたりから、前方右手の上の方に高尾山の山頂に続いていると思われる尾根が見え始める。そして、左手には木々の間から純白の富士山を垣間見る場所もあり、山頂からの展望に期待がかかる。程なく山道の分岐があり、正面に続く階段状の山道を一登りすれば、登山客で賑わう高尾山頂に飛び出すことになる。ここまで、高尾山口駅前からのラップタイムは1時間3分だ。

 雲一つない快晴の今日は、山頂からの山々の展望が素晴らしい。均整の取れた三角形の大山から西に向かって延々と続く丹沢の山並み。そして大室山の右奥に聳える富士の高嶺。今月の上旬まで入院していた都心の病院の窓から、よく晴れた日にはこの同じ山々を眺めていたのだが、その病院から30kmほど西にやって来ただけあって、丹沢も富士もそれよりは近くに見えている。そして、丹沢とは実に堂々とした山並みなのだと、改めて思う。
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(中央奥が信仰の山・大山)

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(丹沢の全景)

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(富士山のクローズアップ)

09:38 高尾山山頂 → 10:10 一丁平展望台(6分休憩) → 10:31 小仏城山山頂 (5分休憩)

 高尾山から西方へ、山道は一度緩やかに下り、一丁平に向かって再び登り始める。春の桜の頃は人気を集めるスポットだが、今はその桜の木もすっかり葉が落ちている。代わって、ススキの穂が晩秋の陽を浴びて輝いていた。

 やがて、東屋やベンチが置かれた一丁平園地を通り過ぎる。その先をもう少し登ると、山道が尾根の左側へ回り込んだ所で南から西方向にかけての展望が大きく広がる一丁平の展望台に着く。ここは本当に眺めの素晴らしい場所だから、時間を気にせずにゆっくりと山の景色を眺めよう。

 ここからの丹沢は、特に蛭ヶ岳から西へと続く山並みがよく見える。28日前に登った西丹沢の檜洞丸。そのピークは見えないが、そこに至る犬越路から小笄・大笄への稜線がなかなか立派である。
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(一丁平からの丹沢と富士山)

 富士山の更に右側にも山並みが続き、三つ峠山や笹子周辺のお馴染みの山々と再会。やはり思い立ったが吉日で、今日はここまでやって来た甲斐があった。そして、驚いたのはその笹子の山々の向こうに標高の一際高い山脈が連なり、その中の二つのピークが雪を抱いていたことだ。それが南アルプスであることはその場でわかったのだが、あの冠雪のピークはどの山なのだろう。帰宅後に調べてみると、それらは共に3000m級の農鳥岳と塩見岳だった!奥高尾の一丁平から南アルプスが見える、それは私にとっては嬉しい驚きである。
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(一丁平からの南アルプスの遠望)

 一丁平で山々の写真を撮っている間に6分が経過した。先を急ごう。いや、今日は急いではいけないのだった。ゆっくり行こう。「激しい運動」にならないように。いつもの癖が抜けないのは困ったものだ。

 山道が再び尾根上に戻り、樹林の中を歩いていくと、木々の向こうに無線中継所のアンテナ塔が見え始める。小仏城山のピークはもう近い。すぐに木道が現れ、傾斜が緩やかになると城山のピークの南端に出た。お馴染みの緑地の向こうに、大室山と富士山がいつものように並んでいた。
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(小仏城山の山頂)

10:36 小仏城山山頂 → 10:54 小仏峠 → 11:20 景信山山頂(26分休憩)

 城山から北は何度も歩いたことがあるので、肌感覚を持っている。次の景信山までコースタイムは1時間となっているが、いつもは40分を若干切るぐらいで歩いてきた。小仏峠までの下りが北斜面で、日当たりが悪いために山道はいつも湿っていて滑りやすい。そして小仏峠から先の登り返しは、今度は南斜面だ。最初のうちは薄暗い森の中で傾斜が案外キツいが、それを越えれば次第に展望が広がって明るい山道になる。今日はあまり頑張らずに、息が荒くならないよう自分なりの暖機運転で景信山を目指した。

 結局、この区間のラップタイムは44分。大勢の登山者で賑わう山頂の茶店の一角で、富士山が見えるベンチに席を取り、名物のなめこ汁を注文。持参したおにぎりで昼食を済ませることにした。
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(景信山の山頂)

11:46 景信山山頂 → 12:30 小仏バス停

 景信山から小仏バス停への下りも、何度も通った道である。トントン拍子に下って行く道で、距離は短いのだが、登って来るのは結構大変なのではないかと思い、いつも下山道に使うだけである。但し、いい気になって駆け下る最中に尻餅をついたことが何回かあるので、走ってはいけない今日は、ともかくも自制して下りよう。

 最初の内は落葉樹の続く中を下る日当たりの良い道だが、植林の中を下るようになると、少し薄暗くなる。やがて、中央自動車道を走るクルマの音が次第に大きくなり、眼下に小仏トンネルの入口が見えてくる。そして山道は右に折れ、下りきったところが舗装道路との出合だ。小仏バス停まではそこから10分もかからない。

 12時30分ちょうどに小仏バス停に到着。結局、景信山の山頂からは44分をかけて下りてきたことになる。コースタイムは40分だから、まさに暖機運転の半日だった。
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 高尾山口からここまで、今日のコースの所要時間は、山地図上では4時間10分。朝の八時半前にスタートし、途中の休憩や昼食に計30分を見込んで、このバス停には13時に着く計画にしていた。それを3時間18分で歩き、休憩と昼食に計45分をかけても12時半にバス停に着いたので、予定より一本早い12時40分発の高尾駅北口行きのバスに乗ることが出来た。この後、電車を乗り継げば14時過ぎには池袋に戻れるから、家内と約束していた買い物への付き合いも、少し早く始めることが出来そうだ。
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 今日はひとまず暖機運転で、身近な山を一回りすることが出来た。しかし、医師から指示されている食べ物・飲み物と「激しい運動」への制限は、まだあと10日残っている。その間は引き続き自制を続け、決して無理をせず、完全復活への道をゆっくりと辿ることにしたい。

 焦らずとも、山は逃げないのだから。

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