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暖かな霜月 - 奥高尾・小仏城山 他 [山歩き]


 11月21日(土)の午前8時10分、新宿から乗った京王線の準特急が高尾山口の駅に着くや否や、ホームの階段から改札口へと向かう大勢の人々の流れが出来て、まるで都心の朝のラッシュアワーのようになった。

 年間の乗降客数が300万人を優に超えるこの駅は、今年の春に新しい駅舎が完成し、先月には「極楽湯」という日帰り温泉施設までオープンしている。私自身はここに来るのは今年の2月以来だから、新装成った駅前の様子を目にするのは今日が始めてなのだが、まあ週末の朝早くから大変な賑わいである。

 勤労感謝の日の三連休。東京近郊の低山も紅葉の季節なのだが、天気予報によれば晴天を拝めるのはこの土曜日だけ。ならば高尾山の混雑も仕方がないか。既に長い列が出来たケーブルカーの清滝駅を尻目に、私は稲荷山コースの入口から山に入った。私の場合、高尾山は通り道で、その先の奥高尾の縦走路がお目当てなのだが。

 前夜は日付が替わる頃まで友人と飲んでいたので、四時間も寝ていない。そうなることは最初からわかっており、自分でも朝起きられるかどうか自信がなかったので、他の山仲間に声をかけることは敢えてしなかった。10月の下旬に富士山にほど近い三国山稜を彼らと歩いてから、もう一ヶ月。不義理をしているが、まあ仕方がない。今日は自分一人のトレーニングのつもりで奥高尾を歩こう。

08:18 稲荷山コース入口 → 08:45 稲荷山 → 09:30 紅葉台

 高尾山へとケーブルカーから最も離れている稲荷山コースが登山者も比較的少ないかと思っていたが、今日はどこも同じようだ。最初のうちから登山者の列が出来ている。何人も追い抜いてみたものの、その先にもまた列が出来ているという具合で、追い抜くためについついペースが上がってしまう。30分足らずで稲荷山の展望台に着くと、遠景の朝もやの中に東京スカイツリーが見えていた。
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 先を急ぐ。稲荷山から先は傾斜が緩くなるので、これまたピッチが上がる。リング状の5号路と合流し、そのまま正面の階段を登り続ければ高尾山頂なのだが、ケーブルカーのあの様子では山頂の混雑は必定だし、私の場合は高尾山頂に立つことが今日の目的ではない。それはパスして5号路を左へ進み、紅葉台へ直接行こう。茶店の左手に展望の良い所があり、高尾山頂よりはずっと気分がいい。

 快晴の空の下、紅葉台からはお目当ての富士山と丹沢の山々が、いつものように見えている。スマホで撮影した写真を仲間たちにLINEで送ったら、次々に返信が届いた。とはいえ、山で「歩きスマホ」はいけないから、私からの更なる返信は次のピッチが終わってからにしよう。
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09:35 紅葉台 → 09:55 八丁平 → 10:10 小仏城山

 紅葉台を過ぎたあたりから、ようやく赤や黄に染まった木々が現れるようになった。そして、ここを通る時はいつもそうなのだが、北向きの下り斜面がぬかるんでいる。ここで尻餅をついて泥だらけになりたくないから慎重に通過。更に登っていくと、やがて眺めの良い八丁平に着く。このコースではここからの山の展望が一番ではなかろうか。
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(丹沢の大山と周辺の山々)

 富士の高嶺にカメラを向けながら、ちょうど一年前の同じ土曜日に、やはり一人でこのコースを歩いたことを思い出した。その時と比べてみると、今年は富士山の冠雪の量がずいぶんと少ない。
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(下は一年前の11月22日(土)に撮影したもの)

 東京都心の気象データを眺めてみれば歴然としていて、今年の10月・11月は平年より気温の高い傾向が続き、特に11月は異様なほどに暖かいのである。日中の最高気温が20度を超えた日が何日もあったのだから。
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 今日だってそうだ。私はこの時期なりの山の恰好をして来たのだが、これでは暑い。登山者の中でも、トレール・ランナー達はもちろんのこと、普通に歩いて登山を楽しんでいる人達の中にも半袖姿が何人もいる。これで11月の下旬だと言われても、どこかピンと来ないのだ。普段の生活も同様で、私はまだ夏の背広を仕舞えずにいる。そういえば、自宅の最寄り駅の前に立つ桜の木は、今朝もまだ葉が青々としていた。

 汗を拭きながら、植生保護のために整備された木道を登っていくと、小仏城山のピークに着いた。ここからの富士山も、私の好きな眺めの一つである。
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10:25 小仏城山 → 10:40 小仏峠 → 11:10 景信山

 小仏城山から小仏峠への下りも、山の北斜面なのでいつものようにぬかるんでいる。峠に降りる少し前、相模湖を前景にした富士山が見える箇所があって、いつものようにこれもチェック。
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 峠からの登り返しを頑張り、森の中から右手の展望が広がりだすと、景信山の山頂がもう見えている。だがこの日は山頂直下の登りが結構きつく感じた。これもまた、この時期にしては異様に汗をかいているからかもしれない。

 標高727mの山頂に立つと、さすがにカエデの紅葉が真っ盛りだ。茶店の屋根やベンチが落葉に埋もれている。そこから高尾山の方角を見下ろすと、山肌はまだ紅葉が始まりだしたばかりという感じで、やはり例年に比べればだいぶ遅いようだ。
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 茶店で名物のなめこ汁を頼み、持って来た握り飯1個で軽い昼食をとる。上々の天気。目の前の紅葉。冠雪の富士。景信山は一人でもこうして時々はやって来たくなる山だ。
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11:35 景信山 → 12:40 明王峠 → 14:15 相模湖駅

 陣馬山方面へのいつもの縦走路を進む。右手に見える奥多摩の山々が青空を背景に清々しい。やっぱり秋の山はいいな。
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 景信山の直下の下りに始まって、ここも決まってぬかるんでいる箇所があり、慎重に通過。ハイキング・コースだからと、スニーカーのような軽い靴でやって来る登山者も少なからずいて、案の定、ぬかるみの斜面で転倒して悲鳴を上げる姿も見かけてしまった。

 稜線上を愚直にたどれば四つのピークがあるのだが、今日はそれらの南側を回るまき道で勘弁してもらって、一時間強で明王峠へ。朝のうちは見えていた富士山が、いつも正午を過ぎてこの峠に着く頃には雲の中に隠れてしまうことが多いのだが、今日はまだその姿が見えている。視界が本当に良ければここから南アルプスも見えるのだが、さすがに今日はそこまでは行かない。
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 一人で来る山は、ろくに休憩を取らないことが多い。この明王峠でも富士山の写真を撮った他には水を少々飲んだぐらいで下山を始めることにした。

 山仲間たちと一緒の時は、ここから奈良子峠を経て陣馬の湯へ下ることが多いのだが、今日は久しぶりに相模湖駅へと下る山道を選んだ。稜線上を最初はどんどんと下る道で、一度舗装林道を横切ると、後は孫山のピークを過ぎるまで、植林の中のトラバース状のとりとめもない山道が続く。その区間がようやく終わって再びどんどんと下るようになると相模湖の湖面が見え始め、階段状の下りになると与瀬神社の境内に出る。墓地の上が見晴らしのよい高台になっていて、石老山と相模湖がよく見えていた。
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 与瀬神社の石段を降りて中央自動車道のオーバーパスを渡ると、5分も歩けば相模湖の駅だ。本日の歩行時間は約5時間20分。この時期にしてはずいぶんと暖かく、1ヶ月ほど前の山を歩いているような気分だった。

 もっとも、この先の天気予報を見ると、この三連休が終わるとようやく冬の寒さがやって来るという。23日の勤労感謝の日からの二週間が二十四節気の「小雪」で、その初候である26日頃までは「虹蔵不見(にじかくれてみえず)」といって、「雲が多くなり、陽射しも弱まって虹を見ることが少なくなる」時期にあたる。確かに明日からは天気が下り坂で水曜日頃には冷たい雨になるというから、ようやく暦に実態が追いついていくことになるのだろうか。

 あと一週間で霜月も終わり。その先は、いよいよ年末の足音が聞こえて来るのだろう。

 相模湖駅の裏山の紅葉をぼんやりと眺めながら飲み干した缶ビールの苦味が、普段にも増して爽やかだった。

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